home >  弓道四方山話 > 巻の参 「修学の巻」

3-22 器用、不器用も関係ない

弓道の修行において、器用、不器用は関係ないことを星野勘左衛門が解説しています。

「器用・不器用と云うて、ものの合点の遅速あり、器用者は生まれながらにして骨法筋道を早く覚る。不器用は遅く覚るなり。器用は早く上達すれども生まれながらにて知るゆえに、師となりて教えるに、骨法の不形を直す道に疎し。不器用は我が骨法の不形を苦労して身に入れて長年を得て上達したるものなり。繰り返し繰り返し鍛錬の上にて悟ったものであるゆえ、人に教えるにその道暗からず。」

もちろん、理解が早いのは望ましいことでありますが、長い修行のなかで、少しくらい上達が早くても、遅くても全く関係が有りません。早く上達をすると、三病(早気、持たれ、緩み)などの悪癖に懸かりやすく、結局苦しむことも多いのです。

「師匠(称号者)の教えを信じて、もっぱら稽古せよ。師匠の教える道は正直(正しく真っ直ぐ)なり。弟子を子のように思ってのことである。師匠は弟子の骨の曲がった所を真っ直ぐにするために教えたるが、弟子は自分の骨の曲がりたるを知らない。

直されると弓力が落ち、中りが止まってしまうため、師匠の教えに背いてしまうと、曲がった骨法は一生涯直ら無いものとなる。

曲がったものを直に(素直に)直すときは、手がかりがなくなるように、弱くなるように感じるが、弱くても強くても真っ直ぐに出るようにならなくては上達しない。」

要するに、初心者のうちはあせらずゆっくりと教えを信じて練習をすること、自分勝手に理解して稽古すると、どんなによく中っても癖を身に付けて失敗することを戒めたものです。

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