home >  弓道四方山話 > 巻の弐 「地の巻」

2-13 空中に浮んでいる矢を真っ直ぐに飛ばすこと

弓道の力学的な作用を突き詰めてゆく時、人間の所作と、弓の運動と、矢の運動の3つに分解することができます。今日はこのうちの矢の運動について述べて見ましょう。

会の状態における理想的な矢の状態は、「的心に向かって空中に浮かんでいる状態」と考えることができます。もちろん重力があるので、「矢は押手の親指の上に乗り、矢筈では弦に嵌って(はまって)摩擦で支えられているだけで、それ以外の力を受けないのが理想である」といえます。

このような状態をもっと機械的に行なうように発明されたものが洋弓のボウガン(いしゆみ)です。これは洋弓の弓に直角な台木を取り付け、そこに弦を掛ける装置(掛け金)と引き金を取り付け、弓を水平にして使用するものです。

これは弓の力が全て掛け金に掛かり内部で釣り合っているので、射手には弓の力が作用せず、引き金を引くだけで正確に矢を飛ばすことができる武器です。(スポーツではない)

弓道の場合も、矢の運動だけを取り出せばこれと全く同じであり、この空中に浮かんでいる矢に対して、弦枕の掛け金を引き金を引くように外して、弦が筈の溝を真っ直ぐに押し出すようにできれば、矢は真っ直ぐに飛んでゆくはずであす。

この矢筋方向をX軸と定義する時、左右の力の方向と離れの方向がこのX軸線上に重なっていなければなりません。これが矢筋方向の働きであり、矢をしならせる篦撓い(のじない)を起こさぬように注意が必要です。

ただし、この状態のままでは一寸したことで、矢口があき、筈こぼれ、弦外れがおきる恐れがあるので、安全装置として若干の押さえ込み、捻りが必要ですが、これはなるべく少ない方が望ましいです。これを半捻半搦(はんねんはんじゃく)、あるいは絞り込みの味と言います。

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