home >  弓道四方山話 > 巻の弐 「地の巻」

2-2 続・弓の薀蓄

洋弓と和弓と比べて見ましょう。

洋弓の特徴は上下が対称であること、矢を左側にのせ、弓を中央までえぐっています。ゴルフのパターのように力の中心に矢が通るように工夫されていることが判ります。しかしこうすると握りの部分で弓の幅が半分になり、弓が折れてしまうのでこれを防ぐため、弓の厚さを分厚くしています。

和弓では矢は右側に番えますが、洋弓のように道具を合理的な目的のために、切り刻んで加工することはしません。

このため素直に弓を引くと弦が弓の中央に戻ろうとするので、矢はスライスしてしまいます。これを防ぐため弓は製作時に楔などを用いて横にも湾曲させ弦が弓の右側に来るように作っています。この製作時の形を入木というのは良くご存知のことでしょう。しかしこのように弓を入木にして作っても、和弓独特の射法が必要となり、初心者のうちはスライスしてしまいます。

今度は、矢のことを少しお話ししましょう。もし狩りに行ってウサギがたくさん出て来たら矢を2本番えたくなるでしょう。2本番えて引きますと、矢は半分までしか飛びません。倍の重さの矢を使うときも同じです。エネルギーから考えると当然ですよね。

矢は放物線を描いて飛んでゆきます。強い弓だと放物線のライズが小さいのでほぼ直線的に見えますが、弱い弓ではやまなりになります。また距離が遠くなると角度を上げる必要があり、遠的をすると良くわかりますね。

矢を番えないで素引きで離すと弦が切れます、また不本意ながら矢こぼれしたときも弦が切れ、顔や手を打ち、痛い思いをします。これらは矢にエネルギーが伝わらないので、弦にエネルギーがかかり切れてしまうためです。

もう一つ経験談をお話ししましょう。これもやってはいけませんが、羽のない巻き藁矢で的前を射るとどうなるでしょうか。この場合、矢は半分位までは真っ直ぐ飛びますが、途中で大きく上下左右に曲がり、行き先が定まりません。外に飛び出てしまう恐れがあるほどです。したがって巻き藁はむやみに離れて行ってはいけません。

では羽のある矢を真上に向けて飛ばすと、矢は頂点まで羽が下にあり、頂点でクルリと向きが変わり下向きになっておちてきますが、羽のない棒矢では頂点で向きが変わることなくあらぬ方向へ飛んでいってしまいます。これは羽の空気抵抗が飛行機の尾翼のように重要な役割を果たしていることがわかります。

しかし羽は鷹、鷲などの高級な羽でなくても、カラスや七面烏でも変わりなく、少々切れてボロボロになっていてもまったく変わりはありません、国際天然記念物級の鳥の羽は、連盟で将来禁止すべきと思います。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部