2-3 弓の強さと厚さ、接着剤の働き
弓の強さは幅に比例し、厚さの3乗に比例することは以前にも書きました。ここで接着剤がはがれて、外竹、ひご、内竹の3枚に分離してしまった場合を考えましょう。3枚の厚さが等しい場合、板厚が3分の1になると強度は27分の1が3枚となるので、結局9分の1の強さになってしまい使い物にはなりません。いっぺんに全てがばらばらになることはありませんが、接着剤の効能は極めて大きいと云えます。
弓を一杯に引く時弓は曲げられて、外竹は伸ばされ、内竹は縮められますが、弓の厚さの中心線では伸びも縮みもなく、これは中立軸と呼ばれ、力が作用しません。従って中央に高価な紫檀などの木材を合わせても、装飾だけであり強度的には関係しません。一番働くのは表面の竹であり、外竹が壊れやすいのはこのせいです。また弓の内竹は上下とも短く作られ、関板によって抑えられ接着されています。この関板は内竹を両側から抑えて力を伝えているので、大変に重要です。上下の籐が緩んで取れたままになっているのは、関板がはがれる恐れがあります。
私は上下の関板の接着剤が相次いではがれたことがあり、自分でボンドを付けて修理したことがあります。外竹が切れた場合に籐を巻いて使うことがありますが、この場合、籐をいくら巻いても、殆ど強くすることはできません。切れた繊維に対して直角にグルグル巻いてもその籐には力が作用しないためです。それ以上に壊れないように抑える働きしかありません。
櫻井 孝 | 2001/09/03 月 00:00 | comments (0)
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