home >  弓道四方山話 > 巻の弐 「地の巻」

2-3 弓の強さと厚さ、接着剤の働き

弓を手入れする時、乾いたタオルで弓の側面(側木)を良くしごきます。これは湿度を良くふき取ることであり、弓の合板の接着を管理することです。

弓の強さは幅に比例し、厚さの3乗に比例することは以前にも書きました。ここで接着剤がはがれて、外竹、ひご、内竹の3枚に分離してしまった場合を考えましょう。3枚の厚さが等しい場合、板厚が3分の1になると強度は27分の1が3枚となるので、結局9分の1の強さになってしまい使い物にはなりません。いっぺんに全てがばらばらになることはありませんが、接着剤の効能は極めて大きいと云えます。

弓を一杯に引く時弓は曲げられて、外竹は伸ばされ、内竹は縮められますが、弓の厚さの中心線では伸びも縮みもなく、これは中立軸と呼ばれ、力が作用しません。従って中央に高価な紫檀などの木材を合わせても、装飾だけであり強度的には関係しません。一番働くのは表面の竹であり、外竹が壊れやすいのはこのせいです。また弓の内竹は上下とも短く作られ、関板によって抑えられ接着されています。この関板は内竹を両側から抑えて力を伝えているので、大変に重要です。上下の籐が緩んで取れたままになっているのは、関板がはがれる恐れがあります。

私は上下の関板の接着剤が相次いではがれたことがあり、自分でボンドを付けて修理したことがあります。外竹が切れた場合に籐を巻いて使うことがありますが、この場合、籐をいくら巻いても、殆ど強くすることはできません。切れた繊維に対して直角にグルグル巻いてもその籐には力が作用しないためです。それ以上に壊れないように抑える働きしかありません。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部