home >  弓道四方山話 > 巻の壱 「天の巻」

1-15 円相の構えは幼子を抱くように

取り掛け、弓構え、打ち起こし、大三に至る円相の構えは、「かわいい幼子を優しく抱くように」というイメージがいいと思います。幼い子を抱く時の手つきは、両手の手の平から下腕、上腕までが幼子の体に沿って滑らかに丸く抱えます。また両腕は父母の思いやりと和合であり、子である矢を優しく抱くことによって、素直に育つものであるともいえます。
伝書では大切な預かりものを、抱えるように大切に扱い、返すべき時には躊躇なく速やかに返すように喩えています。同じような表現として、「重いものを抱えるように」とか、「大木を抱くように」と言われていますが、私はこの「幼子を抱くように」のほうがしっくりとします。

円相の構えと言っても、どの程度円いのか、肘を張るのか、丁度良い形と言うのが判りにくいものです。しかし子育ての経験のあるものならば、幼い子を抱く時の大切に抱えた感じはおのずから判るものです。

この方法であれば、手首に力が入ってしがんだり、手繰ったり、捻り過ぎることなく、肘も突っ張りすぎたり、垂れたり、平付けでもなく、両肩に力みなく、しかし、決して取り落とすことなく自然な形が判るはずです。

これは会における妻手の肘の形も同じであり、「抱え惜しむ気持ちあるべし」とも言います。

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