home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-5 雨露利の離れと剛々正直について

竹林流の古書に、理想の離れとして雨露利の離れについて書かれたものがありました。「雨露利とは雨露の落つる如くやわらかになる味なり、その心少しも邪気がなく、自然の心にて射形もその心を勘へよとの事。云語筆舌に語りがたく、宜しく悟るべきなり」とあります。

雨露利の利の字は語呂合わせであると云えますが、雨露の心を利にせよとの義といえます。雨露利の離れは、露が次第に膨らんで自然にぽとりと落ちるように、癖がなく自然で無念夢想の離れとして理解し易いですが、これは容易に出来るものではありません。たまたま一、二本は「我知らずこの境地に入ること在れど、求めて得ることなかなか及ばざるなり」と書かれており、その後で剛々正直の離れが判り易いと云っています。「剛々正直は離れが正直に左右とも揃うときは剛なる程良しとの意味なり」とあります。

すなわち雨露利の離れはイメージとしては判り易いですが、なかなか容易に実行できるものではなく、かえって緩みにつながり易い危険性があるので、むしろ会を強く引き分け、素直に離れを出す方が安定するよと教えています。この文を伝えた人は正に正直で飾らない本当の達人だったと思います。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

記事カテゴリ
最近のコメント
著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部