home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-4 離れを弓に知らせぬぞよき

「よく引いて曳くな、抱えよ保たずと、離れを弓に知らせぬぞよき」は竹林流の奥義です。例によって私流に解釈しましょう。

「よく引いて」と云うのは、「引く矢束、引かぬ矢束、唯の矢束」で述べたように、丁度良い(過不足の無い)矢束だけ引いたら、それ以上は無理に引くべきでなく、ぴったりと引き納めることです。

「抱えよ保たず」とは竹林流では会を保つ、あるいは持満と云う云葉を嫌い、抱ゆるといい、可愛い赤ちゃんを抱くように、大切なものを預かったように優しく扱い、返すべきには躊躇なくさっと返すようにすることです。

「離れを弓に知らせぬ」と云うのは難解な表現です。弓に知らせる離れは、離すぞ離すぞとの意識が表れた離しであり、知らせぬ離れは、伸びて胸を開いてゆく時、我知らず一瞬のうちに離れてしまう無念夢想の自然の離れです。

これを「弓にも身にも知らせず」と云い、「唯自ずから離れたるが良し、これによって離れと云うべし」とあります。

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