home >  弓道四方山話 > 巻の八 「石火の巻」

8-13 心の動揺

そもそも弓道の修行はすぐに動揺して収まらない心と体をもって行うものであるので、静止して動かない的を射るだけなのに、なかなか容易ではありません。

弓道八節のうちの六節まで整っていい形で収めてきても、離れの一瞬に早気、遅気、緩みなどのわずらいが起きてしまうことがあります。これはほとんどが、中てようと思う気持ちが先立って迷ってしまうためです。つまり、離れを急ぎすぎてしまうために、道に達しないものであり、放す心が出てしまうためです。

射も意識も乗ってきて、狙いがぴたっと付いたとき、よしこれで放して勝利を得ようとの中て気が出てしまい、心を動かすため中らなくなります。

心を不動にして左右釣り合い、胸に強みを含んだまま「只そのままに離れる」のがよいのです。会で五部の詰め合いが整い、胸の中筋を楔で割って、4箇所同時に離れるのが四部離れであり、詰めが充ちて、自(おのずから)満ちて離るるを本当の離れと知るべし。一瞬でも放つ意識が出るときは離れにあらず。

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