home >  弓道四方山話 > 巻の八 「石火の巻」

8-4 小指の効能

三、四段の審査の講評で「弓返りが三段の条件である」との話がでました。弓返りは角見の効いた結果であると思いますが、握りを強くすると弓返りは途中で止まります。三十三間堂の通し矢では時間が惜しいので、弓返りしないように行っていました。
従って弓返りは押手が効いていることの必要条件ではないと思いますが、角見を効かすと弓は180度(向こう弦)位になりますので、せめて90度位になるように新人の方は努力して下さい。弓返りをさせようとしますと、離れの瞬間に握りを緩めてしまう癖がつきます。また勝手のパーの離れもこれと連動した動きと云えます。

私は、押手も勝手も小指の働きがポイントであると考えています。押手も勝手も小指には大きな力はかかりませんので、絶えず硬く握る必要はありません。

ゴルフのグリップ、剣道、テニス、野球などどのスポーツでも握りは重要ですが、いずれも硬く握ると腕全体が鈍るので、柔らかく握って、打つ瞬間に握り締めるのがコツです。

弓でも同じであり離れで緩めるなんてとんでもないことです。卵中と云って卵を握るようにし、はなれの瞬間に小指を握りこめば、弓は会のときの角度のまま返るはずです。また勝手も離れの瞬間に小指を締めながら、知恵の輪を外すようにするっと抜けばグーの離れが出来、左右の締めがバランスします。このとき締めだけが強いと小離れになりやすく、会の延びがあれば大離れとなります。

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