home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-23 物見(頭持ち)の過不足

話の展開から物見の過不足と書いてみたものの、物見が過ぎて弊害になる人は殆どなく、100人に1人程度でしょう。

まれに、物見が向き過ぎると肩が窮屈になり、さらに過ぎると左肩が抜け右肩が出て、両肩が捩れます。三重十文字が崩れて、肩がジグザグになります。いわゆる担ぎ肩といわれ、ひどくなると、縮こまった働きのない射になり、緩み離れとなりやすいものです。物見をしっかりと向けるとき、左肩を物見と同じ方向に逃がしてしまうと、肩が捩れてしまうので、左肩は物見に引き寄せるようにすると、物見も肩も締まる形となります。

逆に、物見が甘い射手は大部分であり、面が緩んで上下左右に傾き、締りのない射となります。狙いにも大きく影響します。物見が不足すると、矢筋と両肩の線が離れ変心が大きくなる。またこの場合、引く意識が強くなり右に開いて体が捩れるので、押せば押すほどさらに右が勝って、三重十文字が崩れ、前に矢が飛ぶ射です。押し手が効かなくなり、手を打ち、髪を払い、頬をうち、眼鏡を飛ばすこともあります。

古書では、「的の方から呼ばれて、はいと振り向く自然な程度で良い」というのがありますが、物見は180度向けるのは無理でありますし、結構苦しいものであるので、甘い気持ちになると緩んで締りのない物見になってしまいます。

物見の基準は五重十文字の5つ目「首筋と矢の十文字」が基本です。これは横から見た場合の縦筋のことだけではありません。自然に向けられるところの限界(ちょっと苦しいくらい)まで真っ直ぐに向けることがポイントです。

これも胴造りと同じく中央であり、左右前後に傾くのは不可であります。すなわち、懸かる面、退く面、伏す面、照る面ではなく、真っ直ぐな面です。このためには首筋は表側だけでなく、裏側(左肩の側)の首筋を伸ばす意識を持つと真っ直ぐに上に吊り上げるイメージができます。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部