home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-24 体を硬くする柔らかくする功罪

初心者のうちは弓の引き方や力の入れ方がよく判らないので、腰や肩、腕や手首などに無闇に力が入って体が硬くなっています。ガチガチに硬くなっていても、肝心なところに力が入っていないので、弓は楽に引けない。むしろその反面、真っ直ぐで十文字にあるべきところはぐにゃぐにゃと曲がってしまいます。

指導者について練習を良く積んで慣れてくると、次第に力みをとって引き分けるコツが少し判りかけてきます。中りも出てきて弓道が面白くなってきます。この段階を大事に上手に育ててゆくと、射術の骨法が判ってきて、安定した良い選手になれるでしょう。

この頃にこうすればよく中ると云って安易な道に入ってしまいますと、中りはあるのですがどんどん楽な方に流され、五重十文字が歪み、早気になり、癖がついてきます。
この癖は次第に固まって頑固な悪癖となりますが、こうなると、もはや中りも遠のき、十文字も崩れ、離れまでも狂って、弓の厄病に取り付かれた状態となります。

悪癖を矯正して正射を取り戻すためには、正直な(正しく真っ直ぐな)十文字の骨格に嵌め込む必要がありますが、この肩関節の矯正は非常に違和感が強く容易ではありません。両肩、両肘、両手首、体幹、頚椎などの関節と筋肉を出来るだけ柔らかくコントロールして、正しい位置に収めることが出来るかが問題です。

ここで総体の関節、筋肉を制御するあまり、過度に柔らかくしてしまうと、悪癖は直すことができたが、いつも同じように決まらなくなってしまいます。

すなわち、余分な力みは抜く必要があるが、要所要所にはピタッといつも同じように収めることが肝心であるので、ヨガのように過度に柔軟すぎるのはいけません。

胸に強みを含んだそのままに収めたいものです。

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