home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-21 過ぎたるもの及ばざる如し(矢番え)

弓道の心はすべて中庸であり、過ぎたるものは及ばざる如し。

たとえば「矢番えに上下の口伝これあり」、矢筈を上に番える時矢は下に飛ぶ、下に番えるときは逆に上に飛ぶ。修行を積んでくると、狙いというものは微妙なものであり動かしにくいので、この現象を利用して微調整することが、江戸時代から伝えられています。

今日は矢が一寸上目に付くときは筈1つ分上に番え、逆に一寸下目に付くときは筈1つ分下に番えると、丁度よくなり微調整ができるという要領です。

しかし、その調整はせいぜい矢筈1、2個分の範囲内に収めるべきであり、大きく動かし過ぎると矢が失速したり、浮き上がって乱れてしまいます。「過ぎたるもの及ばざる如し」であります。

これを戒めたものが五重十文字の1番目「弓と矢の十文字」であり、矢番えは弦に直角とするのを標準とするものです。矢番えの時弦を鉛直にして、目の高さで確認するのもこのためです。

また、矢番えが正しくても、弓を握る高さが上下しては何にもなりません。弓を握る位置が低いときは、矢番えがその分たけ高過ぎるのと同じであり、矢が失速してしまうことになります。握る位置が低いと、弓の上がますます長く、下がますます短くなり、アンバランスとなりますので、この点からも不利といえます。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部