home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-19 続・前肩さがり、後肩あがり

前肩下がり、後肩上がりの癖は、小林先生の言によれば江戸時代に朱子学の影響を受けて中国射法の極意書である「射学正宗」の妄信的な勉強が災いしたものではないかと書かれています。
「射学正宗」は明の時代の弓術書であり、弓手の肩は内巻き込みとして、肩根を低くし、妻手の肩を高く受ける射法としており、これを勉強した江戸時代の弓引きはそのような癖を容認したのではないかというのです。

私の場合は、小林先生の書を読むまで、「射学正宗」については題名だけで、読んだことも内容も知らないので、前肩下がりの癖はその影響ではありません。むしろ斜面打ち起しの陥りやすい癖なのではないかと思います。

三十三間堂の通し矢では胸当てに、肩パッドをつけて引いたので、やはり受け肩の傾向があったのではないかと勘ぐるものです。

しかし、どんなに中国の文化が優れていても、日本の弓道とは道具が違い射法が違いますので、洋弓の射法と異なるように、食い違ってくるはずです。それでも礼記射義に見るように、考え方においては極めて共通する部分もあります。

したがって、全てを丸呑みで信じるのではなく、酸い辛いを見分けながら、参考にすべきであると言いたいのです。

中国の弓は日本の弓に比べて短く、上下対称であり、多分右に矢を番えて、半身でひき、弦は顔の前にあり、矢を目で直接狙って引く射法であろうと思います。そのように考えれば、五重十文字とは異なる射法であるので、前肩下がり後肩あがりも当然であると思われます。

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