home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-9 詰め合い、伸び合い

詰め合い、伸びあいには「射は弓を引くにあらず、骨を射ること肝要なり」、云い換えれば骨、関節を嵌めて引くことが前提です。この上で、心を総体の中央に起き、胸の中筋に従い左右均等に引き分けて会に至ります。このとき三重十文字、五重十文字が規範であることは当然です。

ここで私は、詰め合いと伸びあいは別の事柄ではなく、同一の作用の裏表の関係と思います。引き分けの延長線上で胸筋を開いてゆくと、背筋、肩甲骨は閉じてゆき、関節に詰め物をするように決まってきます。すなわち詰めると云うのは、縮むことではなく、関節が決まってこれ以上伸びられない状態のことだと思います。

この状態は両手、両肩、および胸の中筋の5箇所が同時に詰まる「五部の詰め」と成ります。このとき、さらに僅かに伸びる釣り合いによって胸の中筋に楔を打ち込んで鎖を断ち切るように、火打石を打ちつけて火花が飛ぶように、パンと両手、両肩が同時に飛ぶのが、理想の離れ「四部の離れ」です。

また会の詰めあい、伸び合いにはリズムがあり、ゆっくりと大きな山を上るように、伸びやかに進めるのが良いです。急ぎ過ぎては、詰め合いの充実が得られず、会を待つのでは、持たれとなり緩み離れとなってしまい失敗です。また過度な緊張は硬くなるので、気持ちをゆったりとして、適度な緊張感で軽い離れを出すように心がけることが大切と思います。

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