home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-10 丁度いい矢束

矢の引く長さを矢尺とか矢束といいます。正しくは矢の長さが矢尺で、引く長さが矢束です。

平家物語の那須の与一の矢束は十二束三伏せとあります。これは手の甲の握りを12回に指3本の長さのことですが、手の大きい人と小さい人では長さが違いますので、客観的な基準にはなりません。私の場合、身長が162cmで矢束は85cm、矢尺は88cmです。

矢束の標準は一般的には身長の半分とか両手を広げた長さの半分に5cm程度加えた長さが標準であると云われています。しかし人により骨格が違うので、厳密には引いて自分の射形が固まってくれば決まります。

昔の教えでは「引く矢束ひかぬ矢束に唯の矢束」と3つの矢束があります。引く矢束は眼いっぱい力んで「たぐり」引く矢束で引きすぎて緩む矢束です。(注:7-16「矢束についての訂正」参照のこと)唯の矢束は唯なんとなく引き、緊張感が無い矢束です。

引かぬ矢束はきちっと引いてこれ以上引かなくてちょうどいい矢束であると説明されています。引かぬのが丁度良いと云うのは、逆説的で難解な表現ですので、ちょっと理解しにくいですが、いずれにしてその人の骨に嵌まった丁度良い矢束があり、繰り返し練習によってのみ見つかるはずです。そうすれば、興奮して引きすぎることなく、疲れて引き足りないことも、なくなります。

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