home >  弓道四方山話 > 巻の六 「掛け橋の巻」

6-11 剛弱、抱惜、強搦

よく判らない誤解しやすい言葉として、「剛弱、抱惜、強搦」があります。これもよく判らないなりに、我流の解釈をしてみましょう。

剛弱の剛は押手のことであり、弱は押手の手首の脈所になります。本来は脈の字が用いられるところ、強弱の語呂合わせから弱の字が使われてしまったと思われます。

これについて、古書では、「上へ押し過ぎても下へ弱る。前へ過ぎても後ろへ弱る。上下前後ともに、押し過ぎたる時は足らざる所弱るべき口伝なり。強弱と云うは押手の腕首のことを言うなり、押手の腕首に少しも過ぎたる方あれば、離れにつれて過ぎたる方へ転びて射形総体の弱みとなるなり。」とあります。

押手の脈所は押手の働きの微妙なポイントであり、押手の肘から来る力が、脈どころを通して角見に伝わるのが肝心です。この剛弱どころが入りすぎると、前によわり、入り足らないときには、押せなくなります。したがって「如何程も強きを好む押す力」であるが、この剛弱どころに押手の離れの味があるものです。

よく似た言葉に強搦というのが古書にありました。これは「つよがらみ」とよみ、懸け口を弦に絡ませることを云うのです。「つよくからむ」の口伝は綱引きの口伝とも言われ「綱引きでは一人で引くよりは2人で引くほうが強い」 すなわち、勝手の力は、妻手の肩の力とかいなの力を合わせる味であり、いたって強い働きがあります。

一方、これは勝手の懸けの絞り込みであり、勝手の脈ところから、くるぶしを通る力の方向に、肘全体で絞り込むものであり、決して手首で強引に捻りこむものではありません。軽く絞ることによって、指パッチンの鋭く軽い離れが出せるでしょう。

また勝手の働きは、「抱惜」、すなわち「かかえおしむ」と云い、丸く優しく抱えて、惜しむ気持ちあるべしと言います。

すなわち、押しては脈どころを通じて何処までも強く角見を効かすが、勝手は肘から軽く絞って、くるぶしを張るようにして弦を絡ませれば、肩と腕が力を合わせて非常に強いので、丸く抱えて、惜しむ心で優しくつりあいをとって、弦道の方向に効かせるのがポイントでしょう。

この三つの品をよくよく合点すべしの口伝なり。

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