home >  弓道四方山話 > 巻の六 「掛け橋の巻」

6-10 絞り込みの味

懸けの使い方で絞り込みの話をしましたので、少しくどいようですが、もう少し続きをお話ししましょう。

初心の人が弓矢なしの「陰引き」を行う時、弓手は真っ直ぐなのに、勝手は捻り過ぎて、手のひらが裏返っているのを見ることがあります。「シャドーシュテイング」で述べたように、この練習方法は実際に弓矢がある時のように両肩、両手の位置、形を確認するのが目的であるのに、勝手を捻る意識が強すぎるので、勝手だけがひっくり返ってしまうのです。

雑巾絞りでは右手と左手は同時に捻り込み、右手だけ捻ることはありません。弓でも勝手の絞り込みの反力は弓手の絞り込みと釣り合わねばなりません。 弓は伏せる方向に絞りますが、勝手の絞り込みが弓を照らす方向に作用して、両者がバランスしてあくまでも鉛直方向を維持しているのです。押手が横になるほど捻ることは考えられないのと同じです。

また弱い弓で勝手を強く捻り過ぎると、弦は懸け口で捻られ、弓によって戻されるので、S字状に曲げられてひっかかり、離れがでなくなります。

すなわち、捻りでなく「絞り込みの味」がポイントであります。味と云うのは料理のメインデイッシュではなく、だしであり調味料です。絞り込みによって矢が飛ぶものではありません。洋弓ではただ単に中指と人差し指に弦を懸け、真っ直ぐに引くだけで、絞り込みは行いません。

和弓の絞り込みは、剣道や空手の打ち込みのような瞬発力のためと、前に述べたように安全装置を確実にするため、および知恵の輪を解くような懸け解きにあると思います。したがって、こころもち加減して塩を一寸加えるのが、丁度良いのです。捻り過ぎるのは、弦が曲げられ、矢がしなり、かえって矢色が出て勢いが死にますので、軽く添えるくらいが良いと思います。

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