home >  弓道四方山話 > 巻の五 「母の巻」

5-6 懸けの使い方は箸つかいと兎の耳

懸け(弓懸け、弽、ユガケ)の使い方は箸の使い方と共通点があると思います。筈こぼれや矢口があいて困る場合には、箸の使い方が参考になります。筈こぼれは直ちに無効になってしまいますので、射て外れるよりもショックが大きく、2度とやりたくない筈です。

筈こぼれの原因は動作の途中で、懸けの角度を下向きに(下弦を取る)する場合が殆どです。たいていの場合、打ち起しから大三に移るとき、懸けを送って親指がやや下向きになるときに起きます。したがって懸けの角度を変化させないように注意することが大切です。下弦を取る場合には、取り懸けの段階で行う必要があります。

矢口が開く原因は懸けの人差し指の付け根が矢をうまく支えていないことに在ります。また、中指と人差し指の2本で親指を深く抑えている場合が多いとおもいます。取り懸けの段階では、懸けを軽く捻って矢を抑えて居るはずですが、引き分けの途中で懸けの角度が変化して抑えなくなってしまうためです。

これらを直すには箸を持って豆を掴むようにすればコントロールしやすくなります。

懸けの指つかいは、まず親指を軽く真っ直ぐに伸ばし弦に直角(正確には約10度位下向き)にかけ弦を軽く捻って絡ませ、次に中指の腹で親指の頭を抑え、人差し指を中指に添えます。このとき2本の指を伸ばした形は兎の耳に似ていることから、勝手のことを兎に喩えています。

人差し指が伸びて、中指に添えている形は丁度箸を使う形と同じです。取り懸けから離れまで角度を変えず軽く捻っていれば、矢のように長い箸でも容易にコントロールできます。ぜひ試してみてください。ただし、いままで2本の指で深く握っていたのに、伸ばして中指の腹で抑えるのはとても怖くて指先に力が入るかも知れませんが、親指も中指も人差し指も出来るだけ伸ばして、グーでなくチョキの形になるように努めてください。

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