home >  弓道四方山話 > 巻の五 「母の巻」

5-4 懸けの指使い

懸け(弓懸け、弽、ユガケ)の指使いの基本は、離すべきでないときには確実に安全装置として働き、離れるべきときは躊躇無くフェザータッチのリリースができるように準備することと思います。弓懸けという字は弦を引っ懸けることから云われたものですが、親指の頭を中指の腹で合わせるだけで弦を懸けることができて簡単に離れるように出来ています。

懸けは親指の頭を内側に向けてゆくか、絞り込みを右回転に戻してゆくとき外れてしまいますが、逆に親指を外側に向けるか、内側に絞り込んでゆくと外れなくなります。親指を外側に向けて勝手を捻りこむと、親指は益々外側に向き、大きく手を開かねば離れ難くなります。鈍い離れとなります。

竹林流では親指はなるべく矢に平行になるように教えています。これを一文字と云い、弦と直角になることから十文字とも云います。このとき掛けの中で親指が曲がっていると親指は外を向きやすいので、親指の爪を伸ばせと教えています。また親指を抑えて会を維持するのは、三つガケでは中指の腹(四つでは薬指)であり、人差し指は中指に軽く添えて協力するものであり直接親指を抑えない方が良いと思います。離れ難くなるからです。

三つでは薬指と小指は軽く握りますが、これも押手と対応して働きます。これは小指の働きとして以前に書きました。このような一文字の勝手は肘を軽く絞る(捻るのではない)と安全弁を効かしながら離れやすい形が出来ますし、絞り込みの反動を利用して、はじく離れが出やすくなると思います。

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