home >  弓道四方山話 > 巻の四 「父の巻」

4-16 卵中の手の内は卵を落とさないように

通勤電車の中で、弓道のことを考えていましたら、「卵中の手の内というのは卵を握るようにというが、むしろ卵を落とさないようにすべき」と思いつきました。これは思いつきだけで書いていますので、これを定説とは思わないで、眉に唾を付けて読んで下さい。
押手の手の内の「五箇の手の内」のなかに「らんちゅうの手の内」があります。らんちゅうの手の内は鳥の雛、あるいは卵を握るような柔らかい手の内と言われます。

また、「五箇の手の内」の最後に「嗚呼立ったり(ああたったり)」の手の内があり、赤ちゃんが物に掴まって立ち上がろうとするときの、柔らかくて無邪気な、至極の手の内と言われます。

押手については、如何ほども強くと言い、角見を強く働かせろといいながら、他方ではその反対に柔らかく握れと、矛盾したことを言っているように思いませんか。これは「力を抜くのではなく、力みを抜け」と書いたように、「押手の握りは角見を効かせたまま、力みを抜いて柔らかく握ることであり、決して離れで緩めることではない」と言いたいのです。むしろ反対に、柔らかく握って離れの瞬間に握って角見を効かす事と思います。

弓返りをさせようとするとき、離れの時に弓手を緩め、親指を振り込むのと同時に中指、薬指、小指の三本も緩めて振っていませんか。そうなると多分妻手も開いてパーの離れになってしまいます。私はそれがまずい、両手を握りこむグーの離れにすべきと思います。

卵中の手の内は力みを抜いて柔らかく握ることにありますが、離れにおいて卵を落とさないように扱えば、離れで緩めることなく、上開下閉できゅっと締める感じが出せるような気がします。

手の内の練習方法として、親指と人差し指の股(虎口:ここう)と小指だけで弓を握り、人差し指、中指、薬指を伸ばしたまま、引き分け、会、離れを出してみることをすすめます。慣れないと一寸怖いですが、この「卵を落とさない」感じが掴めれば、十分押手は効くし、弓を落とすことなくできるようになります。 また、このとき手の内が入りすぎていると、角見が効かず、控えすぎると押せませんし、上押し過ぎると押せませんし、下押し過ぎると弓の下側が飛び出して暴れますので、中押しの感じも掴めます。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部