4-17 手の内を柔らかくは緩めることではない
「どこまでも柔らかい手の内」と言うのは、若い頃強弓を引きこなし、角見の効いた手の内で強い離れを出していた達人が、練達の域となり年齢も重ねるなかで達成しうる極意ではないでしょうか。それは至極の手の内、「嗚呼立ったり(ああたったり)」の手の内のことではないでしょうか。
「ああたったり」の手の内は、赤ちゃんが物に掴まって立ち上がるように、至極自然に握って少しも力みや、作為的に整えり、構えたものでなく、最高の手の内と言われ、親が「ああ立ったり」と言って喜ぶことから、名づけられたものです。
しかし、これはどこまでも柔らかいながら、緩めた手の内ではなく、無意識ながら程よく締まり、角見が効いた手の内のはずです。すなわち、「鵜の首」「卵中」「三毒」「骨法陸」の四つの手の内の味を会得できたもののみが、達成できるものではないでしょうか。
まだ角見の働かせ方も判らず、手の内を緩めて離している初心者に「手の内を柔らかく」と教えるとどうなることでしょう。
櫻井 孝 | 2004/03/26 金 00:00 | comments (0)
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