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3-11 続 2足の足踏み

以前に武射系の足踏みについて書きましたが、通勤電車の中で考えていたら、礼射系と武射系の足踏みの動作の違いについてピンと来るものがありましたので、追加したいと思います。

どちらも足踏みも、正しい足踏みの広さと形には全く変わりなく、正三角形に開いた扇の形を標準としています。違いは、開き方の動作と、目で確認するかしないかのちがいだけです。

礼射系の足踏みは、扇を60度開く動作を形で示したものと思われます。的に意を注いだまま左足を踏み出し、右足を引きつけ揃えた所から扇を開くように右足を開いて踏む動作になっています。

武射系の足踏みは扇の要に閉じた両足から、既に60度に開かれた扇の両辺に向かって左足、次に右足と均等に重ねる動作であり、開く動作ではないと考えられます。

私はゴルフも下手くそですが、スタンスを決めるとき、足を閉じて目標にクラブフェースを直角にセットした後、左足、右足を左右均等に開いて肩幅のスタンスをとる方法が最も簡単で確実と思って実行していますが、これとよく似ています。

昔の伝書(奥義書)に「上肩、妻肩を地紙に重ねよ」と言う胴造りの基本があります。これも以前にかきましたが、扇の紙の部分が地紙のことであり、礼射系はこれを開く動作に意義を見つけ、武射系は開いた後の形を定規にして重ねることに専念したものと思われます。 

足踏みを目で確認するのも、同じように的から引いた直線状に足踏みが乗っているかを確認することを基本にしています。

日置流、竹林流では、中墨の曲尺、墨指しの曲尺、蜘蛛の目付けと言う口伝があり、これはいずれも、先ず的を見据えて左足を踏み出した後、的(中)と左足つま先を結ぶ墨糸を目で引き、その延長線上に右足のつま先が来るように、扇の辺の上に踏み出すことを確認しなければならないと教えています。墨糸は大工さんが使う墨壷の線であり、曲尺は定規であり、これを基準、法則のような意味につかっています。蜘蛛の糸も同じです。

このように考える時、2足の足踏みの目使いは、目先で遠慮がちに見るものではなく、堂々ときっちり確認しなければいけないと思います。

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