7-25 弓射における三つの平面
第一の平面は骨格の中心の面、すなわち三重十文字であり、足踏みを基準にして胴造りを鉛直になし、両足、両腰、両肩の三重の重ねで構成され、ゆがみのない一枚の四角い枠組みを組み立てるものです。
第二の平面は弓と矢とで作る十文字の平面であり、両手の手の内を接点とします。
洋弓や中国弓では矢束を小さくして、体の左側半面だけで引くことによって、胴体、顔が邪魔しない射法です。これはこの二つの平面の中心軸をずらすことによって同一平面上に重ね合わせることができ、さらに直接目で視準することができます。このように二つの平面を重ね合わせることができるなら、第三の平面は必要なく簡単なものとなります。
日本弓道ではこの二つの平面の縦軸を一致させて、弓と体が一体となるところまで引き分ける、すなわち総体の十文字射法です。
このとき第一の平面には胸の厚さ、腹周り、頚椎と頭持ちによる偏芯(差し障り)が生じ第二の平面とは重ねることができないので、13cmほど離れた二枚の平行な平面となります。
また、頬付けと両肩の線との高低差も13cmほど離れているので、上下にもずれた二枚の平面となり、この二つの平面を結びつけて保持するために第三の平面が必要となります。
ここで、この二つの平面がなかなか真っ直ぐで平行とならないために、多くの悪癖や支障が生じて、矢は真っ直ぐに飛ばず、酷くなると顔や手を打って痛い思いをします。
第三の平面は第一の平面における両肩付け根と第二の平面における弓手の握りと馬手の握りとを結びつける約45度に傾斜して交差する平面です。この平面は矢の線と両肩が平行であり、それをほぼ直線に延ばした左腕と肘で折り曲げた右腕との平行四辺形に近い五角形で構成されます。
この第三の平面をしっかりと保持するためには、両肩根の高さ、右肘の納まりが重要ですが、適正な矢束が定まれば自ずと決まってくるものです。このとき弓矢との接点である押手手の内、馬手の手の内(取り懸け)も重要であり、さらに胸弦をつけることと頬付けをつけることは平面と位置を安定させることであり、詰め合いの重要な条件です。
この第三の平面は約45度の標準に対して、腕の角度によって横引き、縦引きの射形も見られます。これらは一般には大三の位置の取り方によって決まってきますが、基本的には第一の平面における両肩の付け根の付き方、使い方に応じた射形になるべきであると思われます。
すなわち、体が比較的薄く肩関節が前についている、あるいは物見の深い射手は、二つの平面が接近しているので、大三を引きつけて縦引きで引き分ければ、右肘は無理なく収まり、的中にも優れる射手になると思われます。
逆に体が厚く両肩関節が後ろについていて、首が短く、物見の浅い射手はこの二つの平面の偏芯が大きいので、引き分けの弦道において顔や胸が邪魔をして、右肘は納まり難くなります。この場合には大三を少し遠めにして、やや横引きで直線的に引きつけるのが良いと思われます。しかしこのような場合でも、なるべく物見を深くして、二つの平面を近づけるように努力したいものです。
したがって、第一の平面(三重十文字)をゆがみなく真っ直ぐに立てることが第一条件です。そのために足踏み、胴造り、物見をきちっと行い、姿勢を崩さないことが肝心です。
次に、第二の平面(弓矢の十文字)を絶えず体に平行(鉛直)に保ったまま引き分けるのが第二の条件です。そのためには弓構え、打ち起しにおいて弓矢を鉛直・水平になるように気を配り、引き分け以降もそれを保つことが肝心です。往々にして、押手を強くしようとか、捻りを強くしようとする意識が弓矢の平面を崩すのです。
そして、第三の平面である両腕の収まりは、両肩関節をその人の骨格に合わせて、ちょうど良い矢束まで真っ直ぐに引き収めることが肝心です。自分とは体格の異なる人の美しい射形を模倣しようとすると無理があるので、上記の二つの平面の重なりをイメージしてちょうど良い大三の位置を見つけることが大事です。このときの大三の位置と会の位置も第三の平面の同一面上にあるのはもちろんです。
櫻井 孝 | 2007/03/08 木 08:00 | comments (0)
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