home >  射法は寝て待て > 騎射

多度大社流鏑馬祭 その2

多度大社流鏑馬は参道に馬場を社殿前広場へ向かって設え執行されます。

多度2004一尺八寸角の的板
▲流鏑馬は一尺八寸角の杉板の的を使用する

通常、流鏑馬は百三十八間(約251メートル)の馬場に百二十間(約218メートル)の埒(馬場の柵)を築き、埒の間に幅四尺(約1.2メートル)のさぐり(さくり)を掘って砂を厚く敷きます。この、長さ218メートル×幅1.2メートルの中を馬が約15秒ほどで駆け抜けます。

的は三つ立てます。馬場元(入口)から十七間(約31メートル)のところに一の的、そこから四十二間(約76メートル)のところに二の的、同じくそこから四十二間(約76メートル)のところに三の的を立てます。

的は男埒(弓手側の埒)から一杖(2メートル弱)のところに立てます。射手から的までの距離は思いの外近いものです。

的が近いとはいえ、疾走する馬上で15秒間に三つの的を射抜くのですから、その困難さは想像以上でしょう。一の矢を放ってから二の矢を放つまで5秒以上かかっていては間に合わないのですから、まさに手練れの早技ですね。

多度2004二の矢を抜く
▲一の的を射るやいなや、帯に挟んだ二の矢を抜き出す平騎射

今回は騎射3騎、平騎射18騎でした。当流では単に騎射と言う場合は流鏑馬を指し、それに対して平騎射と言えば騎射挟物(きしゃはさみもの)を指します。

騎射挟物とは、江戸時代八代将軍徳川吉宗が制定させた騎射芸です。吉宗は鎌倉幕府以降に衰退してしまった武芸の復興に努めたのですが、その中でも流鏑馬を復興する足掛かりとして式法・装束・技術を改めて(一部簡略化して)独自に創作した方式が騎射挟物なのです。(流鏑馬と騎射挟物の違いについては細野喜由氏のホームページに画像が豊富です)

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部