home >  弓道四方山話 > 巻の拾壱 「流水の巻」

11-2 流派の因果は巡る

日本弓道連盟の標準とも言えるような本多流が、始めは日置流の一派であったという嘘のような本当の話です。言い換えると、正面打ち起しの本多流が実は斜面打ち起しの日置流であったということです。

現代弓道の先生方の多くが、近代弓道として本多流を学び、日本弓道連盟を設立させ、発展させてきたので、日本弓道連盟流の標準は本多流であると言っても過言ではないと思われます。

前述したように、本多利実先生は日置流尾州竹林派の宗主であり、始めは斜面打ち起しでした。しかし武器としての役割がなくなったことから、武道の近代化として、教育あるいは徳育、体育を重視する考えから、小笠原流などの射礼を取り入れ正面打ち起しに改めました。これは本多流の生弓会のホームページにも書かれています。

もう1つ云えば、新人の方は、正面打ち起しの小笠原流は新しく、日置流が古く見えると思われるかもしれませんが、実はその反対です。

小笠原流は鎌倉時代から続く古い名家で、室町幕府、徳川幕府の弓馬指南役として射法、射礼、格式を教えてきた最も古い流派であり、装束や諸懸けなどにもその古さが残されています。

日置流は戦国末期に生まれ、江戸時代に全盛期を向かえた比較的新しい流派であり、その考え方は合理的、実利的であり、射技、的中にこだわる奥義書はあるが、射礼については殆ど触れていません。

このように、2つの流派の因果が綾のように巡り、入れ替わり、連盟の基礎になったように思われます。

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