home >  弓道四方山話 > 巻の拾 「未来身の巻」

10-9 朝嵐、晴嵐の嵐とは、すさまじきとは

朝嵐、晴嵐の嵐を激しい強風と解釈すると、意味が通じません。 また涼しきと書いてすさまじきというのはどういう意味でしょうか。

「朝嵐 身にはしむなり 松風の 眼には見えねど 音の涼(すさま)しき」の歌は、「達人の射は ごく自然にみえるが、松林の中を清清しい朝風が身にしみるように、凛として爽やかに響き渡るものだ」と解釈すると、激しい嵐では判りにくいです。

また、「老木 晴嵐 紅葉 散り満ちて 冷(すさま)し」の歌は、「達人の射は、夏に一杯に茂っていた楓の老木が、涼しい秋風に紅葉がさっと散っても、梢は微動だにしないようにみえる」このように解釈すると、これも嵐のような激しい風では似合いません。

「弓道小事典」を調べていたら、朝嵐は「朝の微風である」とありましたので、納得できました。

また、「涼しき」と書いて「すさまじき」と読んで、「すさまじく強い離れ」と解釈しているようですが、私には単に「涼やかに、清清しい」のほうがしっくりとします。 「弓道小事典」には同じ竹林流の歌で最後が「−−音のさやけさ」となっているのを見つけました。 この方がよく判ります。

何れにしても、伝書というのは代々多くの人が書き写して伝えられるので、少しずつ違って伝わってしまっているのも事実です。

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