home >  弓道四方山話 > 巻の拾 「未来身の巻」

10-3 三病について

弓の病としては、早気、持たれ、緩みが三病と云われ、罹ると容易ではありません。

私の場合には少し油断すると、直ぐに早気になってしまいます。会で気力が充実したら、いつでも軽い離れを出せるように努力し、詰めあい、伸び合いをし、一方では更に深い充実感を得ようとするのが理想ですが、なかなかそうは問屋が卸しません。

初心者の間は意識して離れを出しているので、早気は深刻ではありませんが、慣れてきて上達するに従い条件反射的に離れが出るようになります。こうなると中りも出て、活躍でき最高になりますが、早気に罹りやすくなります。新人では練習熱心で、離れが良く、上達の早い人ほどかかりやすい病気です。

私は早気を克服したら、ビクリと狙い外れになってしまいました。狙い外れと云うのは私が勝手につけた病気で、狙いが付くと離したくなってしまうので、逆に狙いが外れて、つかないようになったことがあります。この間は保つことができますが、離せないと云う奇病です。

また私の友人は早気を治すため、巻き藁に自分のシャツを掛けて引いたら、穴を明けてしまいました。早気は精神的なものが大きく、条件反射的に出てしまうのでなかなか直らないのです。気持ちを入れ替えて、少し覚めた目で、澄んだ心で心身をコントロールできるようにすることができれば(難しいです)克服できたといえるでしょう。

持たれ、緩みは会の詰めあい、延び合いが止まって、待っている状態で生じます。軽い離れを出そうと、肘の力を抜くのが習慣となると、送り離れ、緩み離れになるものです。離れ口の瞬間は習慣的になるとなかなか直りにくいものです。

緩みに五緩と云うのがあり、五部の詰めの逆で五箇所のゆるみです。

また、ビクリも病気の1種であり、これも直らないものですが、ビクリは上級者のみが罹り、上達の証しであると思えます。これはしゃっくりが止められないように、反射神経的に発生するので止めることは出来ません。会で気が充実してきたが、精神でまだまだと頑張るとき、体が勝手に反応してしまうのがこれです。

ビクリを完全に直した人は見たことありませんが、うまく付き合って克服した人は殆ど先生級の方ばかりです。

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