home >  弓道四方山話 > 巻の拾 「未来身の巻」

10-1 過去、現在、未来

「過去身、現在身、未来身」と云う難解な云葉について、我流の考えを述べてみましょう。この云葉は無論、会者定離の仏教語からきたものであり、いいかえれば輪廻の世界、生前の姿、現在の姿、あの世の姿と云うことでしょうか。

これを弓道に置き換えた場合、一つは修行の段階においての、悟りを云うものであり、もう一つは一射を一つの人生に喩え、離れをもって射の終わりとするものです。

日置流の浦上博子先生の云によれば、射の型の完成に向かって、ああしよう、こうしようと努力して思い切って頑張る時、「清水の舞台から飛び降りる」ような気持ちになれるらしいです。それくらい真剣に弓を引けということでしょう。

我々未熟者は、いちいち1射毎に死んでいるわけには行きませんが、ここは輪廻のいいところで、未来が過去となり、また生き返って前の射が反省点となります。

弓道八節を古くは五味(五身)と云い、すなわち「目付け」「引き分け」「会」「離れ」「見込み」です。これを五行で云えば、足踏み・胴造りが「土体黄色中四角」のように土台作りであり、引き分けは「水体黒色北円形」のようにすみずみまで行き渡り、会は「木体青色東団形」のように一杯に茂り、「火体赤色南三角」では鉄石刻して火いずること急なりで離れに至り、残心は「金体白色西半月」のように三日月に先枯れとなり黄昏の様をさしますが、再び夜明けを迎えるように新しい射が始まります。

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