home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-8 離れの悪癖

離れの悪癖を大別すると、左右がアンバランスなもの、押手の離れが悪いもの、勝手の離れが悪いものの3種類になります。

今日は左右のバランスの悪いものについて、勝手なことを書いてみましょう。

1.勝手が強い離れ
これは引く方にばかり力が入ってしまうため、押手を止めたまま勝手で離す初心者の放しです。残身の形を自分で確かめることを知りません。狙いを知らず後ろを狙っていることが多いです。ひどい人は、勝手が肩よりも後ろに回し、全くアンバランスになっています。的からの矢筋方向を自分で理解する必要があります。

2.えいやの離れ
これも初心者が、放し方が判らないため闇雲にえいやっと放すものです。会の力の方向と全く不連続に、ただむやみに放すので、矢が何処に飛ぶか検討のつかないものです。

射法訓にあるように、「胸の中筋に従い宜しく左右分かれるように離つべし」の心を理解することが必要です。

3.パーの離れ
勝手の手のひらに力が入っており、これををパーと開いて放すもので、勝手離れで一瞬に放そうとして開くものです。離れは勝手の指の十文字を守れば、開くことなくグーの離れをだせることを、練習する必要があります。

中級者になってこれを直そうとすると、結んで開いてになり、なかなか難しいので、早めにグーの離れを身に付けることが望ましいです。

4.戻り離れ
押手を止めたまま勝手が緩む戻り離れは、上記の勝手離れの延長線であり、勝手の肱を止めて肱をコンパスの支点にして開こうとする離れが原因であることが多いです。

肱を止めてコンパスのように開く時、勝手の拳は矢筋に対して直角に近い角度で回転するはず。両肩が回転して肱を飛ばしてこそ矢筋方向の離れが出ることを理解しなければなりません。両肩と両手の同時の離れが四部の離れと云う理想の離れです。

5.ぶった切り離れ
押手の働きを意識しすぎて、押手に偏るアンバランスの離れ。極端でなければ、荒い割りには的中が良いです。

6.上下のアンバランス、左右のアンバランス

押手と勝手の方向が、上下左右にアンバランスなもの。矢筋方向をイメージトレーニングでよく掴むこと。

押手と勝手のつりあいは「父母の釣り合いであり、仲良くしないと、子である矢は育たない」といい、「心を総体の中央に置き」、「心を丹田に収めるこれ和合なり」、「胸の中筋に従い、宜しく左右に分かれるように、離れるべし」

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