home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-9 離れと引き金

離れは放すべきでない時にはしっかりと抱え、放すべき時には、フェザータッチで瞬時に引き金を引いて放すものであると思っています。

そのことは四方山話の中で、くどいように書いてきましたが、初心者から中級くらいの人の中にはどうも「引き金を引く」感覚が無いと思われる方が多いようです。

多分、教本などに「離れは会の詰め合い、伸び合いの後、気力の充実と爆発で自然に離れるもの」と書かれているのをこのまま信じているためではなかろうか。

会でいくら詰め合い、伸び合いをしていても、気力が充実していても、勝手の懸けをロックしたままでは離れは来ません、引き金を引かなければ離れないものです。

そして、その引き金は鉄砲と同じように、一瞬の間にフェザータッチで、ふっと息を吹きかけるような絶妙に軽いものでなければなりません。これが軽妙な離れです。

初心者の人は、放し方が判らないので、むやみにえいやっと放す人がいます。これは鉄砲の引き金を思い切り強く引くのと同じです、銃身の抑え方(ホールド)が不十分であれば尚更、何処に飛んでゆくか判りません。

言い換えれば、銃身をしっかりとホールドするのが会の詰め合いであり、引き金をそろりと引く動きが伸び合いであり、フェザータッチのリリースが離れ口であり、惰性で止まったところが残身であると考えています。

無念無想の離れというのは、意識を感じさせないほど左右が反射神経的に反応することであり、離れの瞬間まで制御できなければ、危険なものとなります。

もう一つは、引き金を引いた一瞬ののちに、それまで作用反作用していた弓の反発力が消滅してしまうために、惰性で押手、勝手がはじけて飛んで、残身となるものです。

決して自分の力で一直線に開こうとするものではない。

そんなわけで、引き金を引く意識のない方は是非引き金のイメージをもっていただきたいと思います。

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