home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-3 続・軽妙な離れ

軽妙な離れとは。ただ優しくひいて、離すことではありません。強く引き分けてこそ軽く引っかからない離れのイメージがつかめます。ゴム弓を引いて離れを出すとき、いい感じであるのに弓と矢を持つと狂ってしまうことが多いです。これは、ぱっと離す意識が災いしているのでしょう、ゴム弓を離すときのように自然なリリースを行うべきでしょう。

前回の話のように、空中に浮いている矢を、弦で筈を押して飛ばすときのことを考えてみましょう。

懸けの弦枕と弦が分離して、弦が弓の復元力によって引っ張り戻される時、弦は弓の幅の中央にもどろうとするので、矢は弓の右側の矢摺り籐を擦って右にとんでしまいます。これは矢摺り籐を見て擦れた痕があれば、また矢の頬摺り羽が擦れて傷んでいれば、角見が効いていない証拠です。

また、弓は下が短いので、押手は下からの力を受けており、矢は親指を擦りながら上に飛ぶ傾向があります。このとき、親指の皮が擦れて血が出るようであれば、上押しが不足している証拠です。

次に空中に浮かんでいる矢を真っ直ぐに飛ばすには、押手も勝手も的心と頬付けを結ぶ矢筋方向に、力は均等に接線方向にリリースしないといけません。

離れが狂うのは後ろ肩が見えないので、矢筋方向がわからず、クロスする方向にえいやっと放すためでしょう。

さらにリリースは、ピタッとホールドしたまま(詰めと云う)真剣で鮮やかに切るように一瞬の技で抜き取るのが理想です。ここらは洋弓やライフル射撃に通じるのかも知れませんね。

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