home >  弓道四方山話 > 巻の九 「紫部の巻」

9-2 軽妙な離れとは

「狙いは押手にあり、的中は離れにあり」

以前「2-6 外れの誤差論」で簡単な計算をしました。的の半径を的までの距離で割って、矢束分を掛けると、狙いの誤差が約3mmとなります。

会で狙いを定める時、2、3mmの範囲内でコントロールするのはそれほど難しくないはずですが、実際の矢はもっと大きく乱れているのが現実です。すなわち、離れが矢を素直に矢乗りの方向に飛ばしていないためです。

矢を真っ直ぐに飛ばすためには、会で空中に浮かんでいる矢の筈を弦が矢と分離するまで、的心方向に真っ直ぐに押し出すと云う動きが必要になります。

これを決めるのが、角見の働きと、フェザータッチのリリースすなわち軽妙な離れであります。ライフルや洋弓ではふっと息を吹きかけるようなリリースときいたような記憶があります。日本の古流ではこれが軽妙な離れであります。

軽妙な離れを出すためには、準備があります。

1. 先ず自分の手に合った使い易い懸けを使います。全ての指の長さ、太さ、柔らかさが丁度良く、真っ直ぐで、握った感じがしっくりするものを選ぶこと。三つ懸けならば、親指が真っ直ぐで、弦枕が腹の中央にあり、深からず、やや指先寄りに付いているのが望ましいです。

2. 懸けは帯をなるべく上の方でしっかりと結びます。こうするとしっかり結んでも、抵抗がなく、懸けも袖が柔らかくならずにいい状態で長持ちします。

3. 取り懸けでは親指は中で軽く伸ばして、矢と平行にして捻りを効かすのが、懸けの一文字です。このとき親指をなるべく外側に向けないようにするのが肝心です。このとき親指が捻りの逆方向に緩んだり、内側に向きすぎると、弦が外れてしまいますので、外れないように軽く肱から絞ります。決して手首で強く捻らないのがコツです。これは取懸けの円相の意味が判れば納得できるはず。

4. 引き分けと会は重要ですが、ここでは取り懸けに作った円相の形を最後まで崩さないことがポイントです。軽妙な離れを出すためには、軽く引っかからないように離れる準備が大切であり、ここでは取り懸けまでについて述べました。

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