home >  弓道四方山話 > 巻の八 「石火の巻」

8-10 弓の分かれ、弦の分かれ、矢の分かれ

弓射の議論をつきつめてゆくと結局、会から離れの瞬間がどうなるのと言う所にきてしまいます。 会者定離の世界は突き詰めても、追い求めても覚れない輪廻の世界、奥義の世界であり、未熟者が酔った勢いで書けるものではないですが、あえて我流の解釈で書いてみましょう。
弓道八節の会は弦道にしたがって、引かぬ矢束ながら十分に引き分け、肩甲骨、両肩、両肘の関節を合わせて、詰め会い、伸び合いを深める時、パンと割れるように4箇所同時に弾けるのが四部の離れであり、これは総体の離れと云われ、体全体の離れです。

古書では会と言う言葉は2通りの意味があり、詰め合いの会の他に、勝手の懸けの結びも会と呼んでいる。この場合の会者定離は懸け金の弾き、即ち指パッチンにより弦が弾かれる「弦の別れ」をも意味します。離れの引き金ともいえます。

この時、鸚鵡の離れであれば、勝手に真似して瞬時に反応する押手があるので、「弓の分かれ」が同時に起きるものとなり、これは角見の働きです。

そして、両拳がそのまま握りこんでゆく間に、矢は飛び出して、押手の弓返りに移るところで弦から分かれて飛び出してゆく、これが「矢の分かれ」であり、その後で押手が10cm、勝手が20cm開いて離れの形となります。

これらの所は、故浦上栄先生の本や故石岡先生、あるいは本多流の研究会の高速度撮影に良く示されています。これらは奥義の世界ですが、自分もいつかそのイメージを会得したいものと追い続けたく思います。

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