home >  弓道四方山話 > 巻の八 「石火の巻」

8-9 大離れと小離れ

現代の弓道はなぜか大離れが全盛で、小離れが否定されています。昔は初心者の間は大離れがよく、中級、上級者になる程小離れになる傾向にありました。

今は上級者も大離れを実践しないと、審査に合格しないと聞きます。しかし、なぜ大離れが正しくて、小離れが否定されるのか、理解できません。

離れの瞬間を高速度撮影で映しますと、離れの瞬間の懸けほどきの段階で、押手、勝手の位置が動く前に弦が勝手の弦枕から分離し、矢は飛び出してゆきます。

したがって、会から離れにおいて正しく詰め合い伸び合いをしていても、鋭く離れがでれば、離れの一瞬に握りこみを行いますので、残身は惰性でだらだらと延びるのではなく、締まって、止まるでしょう。

この結果、残身の形はそれなりに締まった形で決るものと思います。

大離れは両手を大きく開こうと言う意志で両側に伸ばさないと出ないものであり、やや不自然であると思います。

また小離れは反対に止めようとする意識が強く、伸びが止まって萎縮した離れに陥る危険があります。

したがって、私は中離れが最も良いと思っています。中離れは幅が広く、一概に表現しにくいですが、両手は矢筋方向に伸びて、右肱は90度〜120度くらいまで開くのが良いと思います。

小離れが癖になって伸びの無い人は大離れに近い中離れを心がけることによって、伸びのある離れが出せるようになる。

大離れで両手の手先で放す癖の人は、小離れのイメージを持って練習すれば、鋭く両肩で割る離れのイメージがつかめると思います。

したがって、いつも印を押したように大離れとするのではなく、時には大離れのイメージ、時には小離れのイメージで周期的に練習するのが、良いと私は思います。

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