home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-17 押しと引きの対称性

押しと引きは対称か、それによって肩は水平になるのか、肩甲骨は対称になるのか考えてみたいと思います。

力学的には弓の力は内力の釣り合いとなりますので、静止状態では左右の力は釣り合っています。動いている時もビクリや緩みのような急激な変化でなければ、概ね左右は釣り合っているはずです。

力学の世界では引っ張る力をプラスとする時、押す力はマイナスと定義されます。したがって単純に考えれば押しと引きでは反対の作用であるので、逆の働きとなりますが、押手と妻手は逆方向を向いているので、マイナスが打ち消しあって釣り合うのです。

また、押手の働きと妻手の働きを考える時、押す力と引く力と考えてしまいますが、両肘、両肩に注目すれば、右腕を折り曲げているので、共に押し(圧縮)の力となり同じ方向の力を受けることが判ります。

ここで両肩、肩甲骨が水平であるべきか否かについては、両上腕の角度が対称か否かに関係すると思われます。

大三では押手の腕の角度に対して妻手の上腕の方が高い角度になりますので、肩甲骨は妻手側が少し余計に開いた形になります。

引き分けで妻手を引き込んでくると左右の角度が揃ってきて、ほぼ対称になり肩甲骨が納まって(締まって)きます。

会における両肩の使い方は、現代ではほぼ水平にするのが理想ですが、昔の射法では押手の肩を下内がわに巻き込んで使い、妻手側は締めないでやや高めにして行なわれていた。これは強い弓で多数の矢数を楽にかけるために行なわれた癖であると思われます。

このとき、矢が口割で水平であるので弓手の上腕は僅かに上を向いているのに対して、妻手の上腕は水平に納める射形の場合は対称形にちかいが、懸け金を懸けるように肘を下向きに納める場合には、肩甲骨は妻手側が僅かに下がって閉じる形となりますが、このような射形の場合には右肩が高めとなるので、やや右肩あがりの段違いながら右に回転するので、外見上は肩甲骨が水平に近い形に見えることになります。

自分の射はやや昔流に、弓手の肩をやや低く押さえ気味に控え、妻手の肩は高めに迎える形になっているので、やや捻れて伸びの少ない射になっています。体が楽をして引く癖をつけてしまったようです。

この射形はもう30年来で、長年の凝り固まった癖ですので、容易ではありませんが、真っ直ぐに直そうと考えています。

妻手の肩根を押さえ込んで水平に引き込めば、両肩の肩甲骨がほぼ対称に閉じて水平になる筈ですが、妻手の肩を抑えるため、押手が負けそうになってしまいます。

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