home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-12 十文字の錯覚

縦筋と両肩の十文字が弓道の第一のポイントであることは論ずるまでも無いことですが、自分の十文字がどうであるかを見るとき、これにも錯覚があって意外に勘違いし易いと思います。四方山話にはいろいろ書いてきましたので、話が少々だぶるかも知れませんが、年寄りの繰言と思ってご容赦願います。

十文字の横軸は矢筋と両肩の線が平行であることが、基本であり、議論の余地は無い。そして、矢は頬の位置にあるので、両肩の線よりも約13cm位高い位置にあり、真上から見るとき両肩の関節を結ぶ線と矢筋も約13cmくらい離れています。

このため、押手の握りこぶしの位置は左肩関節の延長線の位置から、右上方45度方向15cmの位置になります。

また、勝手は上腕と下腕を折り曲げて、懸け金のように、あるいは自転車のスタンドのようにカチッと決る所まで引き分けるので、右肱の関節は右肩の延長線上よりも3〜5cm位右下45度後方に納まるはずです。

すると、押手の腕は左肩の延長線上ではなく、右上方向に約10度位折れて、肩との角度は170度位になります。

また勝手の上腕も右肩の延長線ではなく、右下後方の10度〜15度位折れるので、肩との角度は190度位になります。

したがって十文字と言うのは、あくまでも両肩までのことであり、両腕まで含めたものではないと言うことを認識しなければなりません。

両腕までを含めて十文字にしようとすると、左肩と腕の角度、および右肩と腕の角度がともに180度で、ほぼ同じに見えるようになってしまいます。こうすると押手、両肩、右腕が一直線になり、矢筋とは平行にならなくなります。

これは鉄砲肩、あるいは棒肩と呼ばれ、押手を中心にして、矢筋と横軸が三角形になってしまいます。

すなわち、左腕、両肩、右腕は、一直線ではなくジグザグに折れて、中央の肩の線が水平になっているのが正解なのです。もちろん、逆に行き過ぎるのも、担ぎ肩となり肩が水平、平行でなくなりますのでダメです。これらは、ともに三重十文字の狂いと言います。

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