home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-2 会の形(その2)

会の形の中庸は三重十文字にあると云いましたが、今日はその規範から外れた癖について述べましょう。

1.突っ張り肩、鉄砲肩、棒押し肩
これは押手を強く押そうとして、左肩が突っ張り、押し手、左腕、両肩が一直線になり、押し手の握りを交点として矢筋と三角形となるものです。両肩は矢筋とは平行ではなくなりますが、的に向かって一直線に押しているので、本人は肩の十文字が狂っていることに気がつかないのです。

この場合、左肩が出すぎて右肩が開きますので、体全体が右に捩れ、右肩、右肘は骨にはまりにくくなり、さらに引く意識が強くなります。これは押手と勝手が相克となりどこまでも決まらない形です。手繰りと呼ばれるようになると、矢束は大きくなり苦しい射となります。また勝手離れになりやすく、押しているにも関わらず、矢は前に出ます。これは押し手の片釣り合いと云えます。

2.担ぎ肩、背負い肩
これは突っ張り肩の逆で、左肩を控えすぎて右肩を迎えると、体全体が左に捩れて受け、左肩が凹み、右肩が高くなり、矢束は小さくなります。両肩が矢筋と平行にならず、ジグザグになる形です。原因は楽に納めようとして、小さくなってしまうためです。この形は軽度の場合には、肘が良く決まって、押し手も良く効き、良く的中することがありますが、重症になると送り離れ、緩み離れとなってしまいます。ひじがあまり深く決まってしまうと離れは出にくくなり、緩んで肘が浅くなった所で離れるようになるからです。これも片釣り合いです。

重いリュックサックを担ぐ場合には、両肩で均等に担ぐべきであるのに、片側の肩で担ぐのに似ています。この場合、肩の肩甲骨は平らにはならず片釣り合いとなります。

ただし、これを直すのは相当な違和感があり、自分の射を見失う恐れがあるので、あせらずじっくりとやりましょう。

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