home >  弓道四方山話 > 巻の六 「掛け橋の巻」

6-14 手の内の整え方

取り懸けのあとは手の内をどう整えるかがポイントです。諺で「手の内を見せるな」、とは弓道用語か将棋の言葉かは判りませんが、押手が効くか、効かぬかは手の内の整え方に大きく影響します。

押手手の内と弓の直角は五重十文字の3番目の曲尺です。手首が弓と斜めに当たっていては十文字とはいえません。何が中押しかは弓に直角であるかが基準です。

押手の五品について、すなわち中押しを良しとし、上過ぎるもの、下過ぎるもの、入りすぎ、控えすぎ、即ち上下左右の癖については以前に書きました。

また伝書に書かれた五箇の手の内、即ち「鵜の首」、「らんちゅう」、「骨法陸」、「三毒」、「嗚呼立ったり」についても訳のわからんことを書きました。

手の内の形については、弓道教本第4巻の福原先生の写真、図解が本当に判り易く、松枝先生の弓道三昧も凄いと思います。また、日置流印西派の浦上先生の紅葉重ねの押手が決っています。

日置流の押手の作り方は、取り懸けのあと斜面に構える時、妻手の肘を張ったまま、弓手の股で弓を3分の1押し開いた状態で、弓手の指を全て開いて天文筋を弓の角に七対三の割合で直角にあて、まず親指、小指、中指、と詰めて整え隙間の無い所に薬指を差し込んで紅葉重ねの手の内を作る。この時押手は弓を握ったままであるので、少しも捻っていないものといえる。また斜面に打ち起すとき、引かないで肘を張ったままの形で上げて大三に至るので、弓構えのときの形のまま弓手妻手が大三で作られ、押手は捻っていないと思われる。押手の角見を効かすのは、大三での腕の方向と弓の面との角度の差が、自然に捻れて、効いてくるのだと思います。

正面打ち起しの場合にも手の内を整えるのは参考になりますが、打ち起しから大三に至る受け渡しでの押手の入れ方が難しい。大三に至る時、押手を強く握って捻りを加えると、それ以降の引き分けにおいて押手の捻りが一杯に成り、ずるっと滑り、かえって押手が入りすぎて角見が効かなくなります。少しでも捻りを強くしようとして最初から捻ってしまうのは、結局効かない押手となります。

したがって、大三では握りに力を入れず、斜面の手の内のように控えめで真っ直ぐな形を作るのが、後で効く手の内になると思います。

竹林では斜面に構えた時、羽引きまでしか開きませんし、矢はなるべく平行にして円相に構え、手の内を握り直すことはしませんので、丁度両者の中間のような形になります。したがって注意点も正面打ち起しと殆ど同様であると言えるでしょう。

そしてこの斜面に構えたときの弓手と妻手の形が同じ方向を向いていることから、比人双の比の位(形)と言われています。

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