home >  弓道四方山話 > 巻の五 「母の巻」

5-14 矢色、篦じない(のじない)

矢が尻尾を振りながら飛んでいくのを矢色が出ると言いますが、気持ちよくないですね。素直に真っ直ぐ飛ばしたいものですね。

矢色の出る状態を考えると、まず矢は真っ直ぐにできており、矢羽が方向を真っ直ぐにしますので、尻尾を振るのは、矢が曲がっている、羽が用を成さない、離れの方向が矢筋(X軸)と角度を持って斜めに切っている、あるいは緩んで放しているのいずれかです。

矢が曲がっているのは、安土の軒、たまには的枠にぶつけた場合にジュラルミンの矢ではたまにおきることがあります。これは2本の矢を平行に持って、調べたい矢をその上にのせて静かに転がし、次に少し早く転がすとき、曲がっている矢は暴れ出してしまいますので、自分で確かめると良いでしょう。

羽がいたんでいる時、矢が狂う恐れも考えられますが。羽はほんの少しあれば十分真っ直ぐにとぶはずです。ただ羽が傷んでいるのは扱いが下手であると思われるので、上級者は扱いに注意しています。けっして、天然記念物級の羽が綺麗な矢飛びを出してくれるものではありません。

したがって矢色がでるのは殆どの場合、矢筋の方向(X軸)に対して角度を持った方向に放すか、緩んで放してしまっているか、あるいは会で矢が撓って(しなって)曲がっている場合です。

矢の篦が撓って(のがしなって)いると、矢は会で曲げられていますので、放した瞬間に矢が曲げから解放されて振動しながら飛ぶので、乱れることになります。

矢筋をX軸とする時、押手も勝手もX軸の方向に引き分け、絞るのはX軸回りに絞るのが肝心であり、この軸にクロスした角度を持って手首で捻りこむと、離れは出ないし、矢の篦を撓って、手首に力みが入ってしまいます。

ここで、X軸に平行に妻手を取り懸けすることを考えてみましょう。私たち竹林流では取り懸けは矢筈の10cm位下のところで懸けの親指を水平に矢筋方向から差し込み、そのまま中指で親指を軽くおさえて水平に上に刷り上げると人差し指、捻り皮が矢に接する所があり、その位置で中指を結んで取り懸けとします。

現在、正面打ち起しでは、矢筈のすぐ下に直接懸けを結ぶように指導されています。しかし称号者、上級者はこのことをよく理解していますので、竹林で言っている取り懸けと同様に水平におこなっていますが、初心者はこの直接懸けるとき、殆どの人は筈を深く(下の方に)懸けるため、人差し指が邪魔をするので、親指が斜め下を向いてしまいます。ここで妻手を捻ると親指が外を向き、人差し指の付け根で矢を抑えすぎて、弓との間で捻って篦をまげてしまうのです。

したがって私が言いたいのは、取り懸けで妻手を矢に対して水平に平行に差し込み、そのとき会の肘の形を意識して、肘を保って、矢筋と人差し指が平行になるように(やや捻り革の上の方に筈を受けて、そのまま角度を変えず、中指の第2関節と第3関節の間で親指をフック状にかけ、人差し指は中指に添えて協力する(直接親指を抑えない)ようにするのが良いと思います。

すなわち、行射において絞り込みは必要ですが、X軸の方向をいつも認識することが重要であるということです。それが半捻半搦の方向です。角度を持っている方向に捻りこむのを注意する必要があります。

矢筋方向に伸びるとき、両肩線と両拳線(矢筋)とが約10〜15cm位偏芯していることから、矢筋ほうこうに伸びれば、そのモーメントにより胸は開いて離れ、紫部の離れとなるのです。決して両手先だけの2部の離れでは有りません。

しかし、会で緩んで離れに至る時は、会からの連続性が途切れ何処に飛んでゆくか検討がつきません、これが最悪の状態です。

これも会でX軸とクロスしているとき離れがでないので、緩んで離れると考えることができます。

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