5-16 馬手の捻りの過不足(不及)
懸けを結ぶに弦を捻るということ、世人これに過不及(すぎたる、およばざる)あり。過不及ともに了見(りょうけん)の違うところであり、よく考えて知るべし。
親指の腹に弦を一文字に懸け、その親指を中指、人差し指にて結んでみるべし。このとき弦を捻るの度合いについての過不及は、骨相に引き当てて考えて知るべし。
人差し指の付け根の横腹の中央に弦の当たるところがある。不及の場合は弦が当たらないし、捻りすぎると人差し指の腹が痛むことになる。これが過不及である。
捻り過ぎたるときは弦が曲がり、曲がった弦から出る矢は真っ直ぐになるはずがない。弦が不直(ふちょく)であれば、矢の出るところもまた不直となる。すなわち、捻りが強過ぎると弦がロックされて、引っかかり、矢が曲げられて暴れるものである。素直ではない、ひねくれたものとなる。
懸けの手の裏(ての平:うちがわ)の見えるを嫌うのは捻り過ぎたるゆえである。また一向に捻らぬを手斧懸け(平付け)といい、これを嫌う。捻りの過不足はひじの骨法のはずれるためである。試して知るべし。
自分の考えでは、懸けは手首で捻ってはならない、親指を水平にして弦にかけるとき、肘を円相に保ったまま、内側に絞り込むようにすると、懸け口で弦が絡(搦)(から)んでくる。また、平付けは手の甲が見えているものであり、絞込みが効いていないので、緩み勝ちでしまりがない射、離れとなりやすい。
この懸けの使い方のポイントは矢筈を親指の付け根の深いところに挟んでしまうと、人差し指が邪魔をして、親指が下を向き、これを捻ると外を向いてしまう。また、親指の頭を人差し指で抑えるときも、人差し指が邪魔をして親指が下を向いてしまうものである。
すなわち、取り懸けで指を結ぶとき、あくまでも親指を弦に直角に当てることを優先しなければならない。
これが半捻半搦(はんねんはんじゃく)の心であり、五重十文字の1つの「懸けの親指と弦の十文字」が基準であるといえる。
櫻井 孝 | 2003/04/15 火 00:00 | comments (0)
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