home >  弓道四方山話 > 巻の五 「母の巻」

5-12 懸けの手術(続・朝嵐の懸け)

朝嵐の懸け(弓懸け、弽、ユガケ)と称して、懸口の溝の位置が親指の付け根ではなく、10mm位指先のほうにつけた四つガケを購入しましたが、使いこなせなくて困っていることと、弓具店に溝の角度が斜めすぎるので、直したいと依頼したら「四つ懸けは大筋違いと云うて斜めになっているものですので、慣らしてください」と云われて、かわりに「朝嵐の教えを受けて 射るならば 昼おば過ぎて 夕嵐になるなり」と書いた手ぬぐいを頂いた話を以前に書きました。

それから、少し使い込んで見たものの相変わらず合わないので、自分で修理することにしました。懸口の周りの白い革の部分は回りを1mm以下の細かいピッチで丁寧に縫ってありますので、これを解いてしまうともう縫えないであろうなと、多少不安がありましたが、結局カッターで糸を切り、革を強引にめくってみました。

まるで脳外科の手術のように(見たことはありませんが)見るも無残に剥がして見ました。すると、親指の頭そのものは懸口の段差はなく、つるっとした円い頭であり、その皮の上に水牛の角を削った幅1cm、厚さ2mm位の台形のへらのようなものが接着してありました。

この台形の底辺が斜め30度の直線となっているために大筋違いとなっていることが判りました。そこで、この台形の底辺を丸く切ってほぼ直角に付け、下から1cmで親指の中央に再び接着し、さらに懸口の皮をかぶせて接着しました。やはり糸で縫うことは素人には無理ですがボンドで綺麗に接着できました。

的前でこれを使用してみたら懸口の違和感はなくなり、真っ直ぐに中央から弦が抜けてくれるようになりました。やはり、大筋違いよりも一文字の方が自分に合っていることが判りました。

これで、夕嵐ではなく、せめて昼嵐くらいになったと思います。また溝を少し指先側にしたのも親指が弦に引かれる感じがあって具合がいいように思います。これで中りも少し安定するとなおいいのですが、それとこれは別のようです。

結局懸口の修理は1時間もあればできる簡単なことだと判りました。懸口でお悩みの方には、お直しは引き受けできませんが、修理のご指導はできるようになりました。

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