home >  弓道四方山話 > 巻の五 「母の巻」

5-2 道具としての懸け

懸け(弓懸け、弽、ユガケ)には製作者(懸け師)によって相当な癖がありますので、自分に合うか否か注意が必要です。懸けの形は先ず親指の長さ、方向、曲がり、および弦枕の位置が親指の腹の中央にあるかがポイントです。次に袖の長さ、方向、指の太さ、なじみ具合などです。

私は手が小さいので、親指が小さめで、真っ直ぐで、弦枕が親指の腹の中央についていて、少し柔らかめでグローブのようにしっくりするのが好みです。紐は中幅、長めが好みです。

使うときは懸けを軽く握った状態で手首の上の方で親指の縫い目を隠すように堅めに巻きます。こうすると懸けの袖が堅くても、手首の動きを拘束せず楽に使えますし、懸けが傷まないようです。私はいつもギリ粉を少しつけて、皮が白くなった状態で、適度な摩擦とすべりを保ち、会の詰め合いでギリギリと音が出るようにします。また弦枕は時々こてを当てたり、蝋を付けて滑りやすくなるように手入れをします。ギリ粉で黒くなった汚れはしみ取りなどでふきとります。

懸けをしまう時は親指の上に3本の指を包むようにして、懸けの紐を斜めにぐるぐると巻き上げて包むと、握ったとき手になじみやすくなります。最後にタオルに包んで、懸け袋にしまうときれいな状態で長持ちします。

コメント

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部