home >  弓道四方山話 > 巻の七 「十文字の巻」

7-31 十文字射法について その1 〜縦横十文字のこと〜

和弓は長弓を使用し、全身で引き分ける十文字射法です。和弓以外(洋弓、中国、蒙古、朝鮮弓など)の射法は、いずれも短弓を用い左肩を軸に弦を顎まで引いて、眼で矢を直接照準する半身射法と云えます。

十文字には、「縦横十文字」、「三重十文字」、「五重十文字」という三つの規範がありますが、その根本は縦横十文字を達成するための詳細な原則と云えます。
注:和弓は魏志倭人伝に「上長下短の木弓を用いる」と記されています。また日本人は東夷と云われ、「東の大弓をもつ人」と云う意味が隠されています。

弓道教本には、射法・射技の基本として基本体型があり、縦横十文字の規矩を定めています。云うまでもなく、脊柱を縦軸として上下に伸び合い、両肩を横軸として水平に伸び合い、十文字を構成するという単純なものですが、必ずしも容易ではありません。

それには「骨相筋道(こつあいすじみち)」と云い、左右の上腕骨頭が肩関節(鎖骨基部)に嵌り、左右の筋肉が釣り合っていなければなりません。

これには「大円の中に十文字(島津家の紋所のような)」のイメージがあり、自分の身の丈に見合う丸い円の中で、上下左右に釣り合って、横一文字に広がった離れの形であり、これを「大円の覚り(座禅の心)」とも云います。

また、丹田から足踏みの交点(両足の親指爪先と踵との)に下げ振り(測量に用いる)を垂らすようにして重心を一致させるのを「下げ振りの曲尺」と云います。さらに「袴腰の曲尺」と云うのは、袴の腰板に腰椎から脊柱がピタッと付くことを意識するとき縦軸が正しく座り易く、胴造りとも一致します。
注:曲尺(かね)とは曲がり定規ではなく、大工が使う直角定規(かねじゃく)であり、基準、規矩、法の意味に用い、「金」と書く場合もあります。

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