home >  弓道四方山話 > 巻の壱 「天の巻」

1-11 礼記射義・射法訓

弓道教本の原点として、礼記射義があげられています。しかし、礼記は中国の春秋時代、孔子のころの書物のはずです。従ってここで云う射は中国の古代の弓道であり、日本の十文字の弓道ではなく、半身で構え、蒙古弓のように親指で抜く射法の弓と思われます。 このように射法が異なっても、その精神は現代弓道にそのまま当てはめて、通用することに驚きがあります。
射は立ち居振舞いの全てが礼にはじまり、礼に終わると言うことが、全くこのまま当てはまっています。

中国では座る習慣がないので、日本の弓道の立ち居振舞いとは全く異なるものですが、それなりに同じ精神であったと考えられます。

この点では実際の射法の違いを超えて、その修行のスタンスの共通性を教科書として採用した先達の懐の大きさに関心します。

ところで、弓道教本には弓道の持つ精神性と射術の2面について、礼記射義はもっぱら礼および、精神的な指導を述べ、射法訓は射術面の指導を述べたものと解説されていますが、私は殆ど同じ考えに立っているように思われます。

礼記射義では、先ずは体を直くして後弓をとることが大切であり、詳細には記さないものの規矩に従って正しく行うことが大切であり、そうすれば必ず的中する、的中が無い時は己が間違っており、これを己に求めるのみとしています。

射法訓にも、先日紹介したようにその前文では修行の心得として、弓の心を正しく理解して、そのチェックを己に求めることが書かれており、礼記射義と同じことをのべています。

従ってこれらは弓道の2つの要素を別々に教えているのではなく、ともに精神性と射法の両方を併せ持っていると解釈できます。

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