7-29 会の形(その5へのコメントに応える)
「7-5 会の形(その5)」について関谷様からコメントを頂きました。ありがとうございます。これまでコメントを頂くことが少ないので、自分では良いと思って書いたことが、実際には独りよがりの自己満足ではないかと淋しく感じていました。今後もどんどんコメントを頂きたく思います。
私はコメントの文章から関谷様は相当な射手であると推察しています。「両肩を巻き込んで、しっかりと詰め合い、鋭い離れがでます」、これこそが骨法であり、なかなかできなくて誰もが苦労しているのです。
私はコメントの文章から関谷様は相当な射手であると推察しています。「両肩を巻き込んで、しっかりと詰め合い、鋭い離れがでます」、これこそが骨法であり、なかなかできなくて誰もが苦労しているのです。
さて、関谷様の射に対するアドバイスということではなく、一般的にコメントの文章にあるような射を行おうとする場合の注意点を考察することで返事に替えたいと思います。
最初に断っておきたいのは、例えば「大きく引く」と書いても、それは人それぞれのイメージであって実際に大きいのか、適切なのかは、射を見てみないと判りません。「小さい射の人が大きくする」のは正しいが、「既に大きい射の人がさらに大きくする」のは誤りです。弓道は「天秤」のようなものですので、常に両方を考えないと偏ってしまい、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」となるからです。
1.射形を大別すると「縦引き」と「横引き」があり、どちらがふさわしいかは射手の体型・骨格・得意によって決まるというのが7−5の主旨です。これについては「弓射における三つの平面」にも書きましたのでご参照ください。概ね、細い体型の人は弓の面(矢筋)と体幹の面(両肩の線)が近いので、縦引きが好ましく、的中も優れるでしょう。逆に体が太く、首が短い射手はこれが遠くなるので、横引きにしないと右肘が右肩に納まりません。
2.体型が「腕が長く体が細い」のであれば「大三を高く近くとる」縦引きはふさわしいのですが、「平付けのまま引く」のは横引きを意味するので、これを一緒にするのはいわば正反対の射を同時に行うため難しいです。
3.平付けというのは抱擁するように、妻手の甲が横を向いて捻らないことを言います。横引きや四つ懸けでは正しい射ですが、縦引きで行うのは締まりが無く、暴発する恐れがあります。したがって、縦引きのまま平付けにせず、耳の近くを真っ直ぐに下ろしてくれば、骨法に合った会が得られると思います。円相に構えたまま肘を軽く張って、両肩の回転で打ち起し、大三を高く近くとれば、馬手の甲は手首を捻らなくても自然と天井を向き、程よく捻った形となります。
4.「横に大きく引き抜く」とは四角く引くことですから、その場合は「押して引く」イメージになり易く、右肩が開いて、手繰り形になり易く、矢束にも影響します。矢束は「引き不足」も「引き過ぎ」も不可であり、「自分の骨格に合った矢束」だけ引き収めるのが適正です。これは両手を真っ直ぐに伸ばして馬手を折りたたんだときの矢束にほかなりません。
5.動作の途中で何かをするのは要注意です。動作は単純にワンピースで行わないと右往左往して難しくなります。引き分けは大三から会へのアーチ状のレール(弦道)を通ってコンパクトに収めるのが良く、途中で方向を変えるとレールが曲がって行き先を見失い易いです。
6.「引き分けの中盤から両肩をしっかり巻き込む」のは大事なところです。打ち起こしでは肩甲骨が大きく開くので両肩が上がり、下げることはできません。大三に受け渡すと弓手の肩は下げられますが、妻手の肩はまだ上がったままであり、「引き分けの中盤」になって両肩を下げることが出来るようになります。多くの射手は大三で弓手の肩だけを入れて「押して引く」ので、両肩の線が崩れ易くなりますが、ここで左肩だけでなく両肩を考えていればOKなのです。ただ、私は「しっかり巻き込む」のではなく「両肩をストンと落したまま」で良いと考えています。それは力みを生じさせたくないからです。
最後に「先生の指導」についてですが、先生方は両肩の納め(三重十文字)を最重要点として見ていると思います。関谷様の場合、先生がそれを「教えない」のは恐らく両肩の詰め、射形が正しい状態にあるためと思います。初段程度までは迷わず教えのとおり指導を受ければ良いのですが、相応の段階になれば、教えの内容を自分で理解し、試行錯誤し、取捨選択して身に着けて行くことが必要になると思います。これは1−14に書きましたので、参照ください。
櫻井 孝 | 2009/07/05 日 22:56 | comments (0)
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