home >  射法は寝て待て > 歩射

骨折後7ヶ月で完治

五十肩運動.gif

骨折後4ヶ月のレントゲンでは特に変化無しでしたが、医師からは積極的にリハビリをするようにと指示されました。確かにこの1ヶ月間は目立った回復の手応えがなかったので、騎射体操と素引きといった自己流のリハビリではなく、もう少し医学的な根拠のある体操なりストレッチなりをしなければならないのかもしれません。

医師からは腕を高く上げるストレッチを勧められました。これは自分の腕の力で上げるのではなく誰か他の人に腕を引き上げて貰うか、高いところにつかまってぶら下がるようにするのだそうです。

しかし、ストレッチしたいときにいつも相方がいるとは限りませんし、鉄棒のようにぶら下がれる器具もあるとは限りません。そこで色々試してみたのですが、思い立ったときにすぐできるのは両腕を上げて上体を前屈みに倒す方法です。床に両手両膝をついて四つんばいになり、両腕の間に頭が入るように肩を押し下げて腕を伸ばします。オフィスなどで椅子と机がある場合は、椅子に座ったまま机の端に両手をかけて前屈します。

驚くことに、二三日これを真面目にやったら急に肩の可動域が広がりました。ただ、ポキポキ音がするのは相変わらずですが。

これ以外に効果があったのは「ひじまる体操」「肩の後方へのストレッチ」「仰向け寝ストレッチ」でした。ひじまる体操はNHKのためしてガッテンという番組で紹介されたのでご存じの方も多いと思いますが、肘先で大きく丸を描くように肩を回すだけの運動です。

ひじまる体操は簡単な運動ですがポイントが二つあります。ひとつは、指先を肩の付け根から離さないこと。単に肘を曲げて肩をグルグル回しているだけでは効果がありません。Tシャツを着て運動をしているとしましょう。肘を曲げて手の指を頭の後で組みます。そのまま組んだ指を解いて首根っ子と肩の間のTシャツを摘みます。このTシャツを離さずに肘先を回します。

二つ目のポイントは、肩を回すときに肩甲骨を大きく動かすこと。こうすると胸や背中や腰も大きく動きます。水泳のバタフライのような動きになります。NHKによれば、ひじまる体操は毎日3分間するものだそうですが、きちんと大きく全身を使って実行すると相当しんどいです。

次に、肩の後方へのストレッチですが、まず両腕をだらりと下げた位置から手を背中へまわします。手の甲を腰の上あたりにつけて、肩が痛くない方の手でもう一方の手首を掴んで背中から離すように後へ引っ張ります。両肩を下げながら肩甲骨同士をくっつけるような動きになります。

最後に仰向け寝ストレッチですが、これは寝るときになるべく頭の後で指を組んで仰向けになるだけです。痛い方の肩は開きませんから肘が布団や枕に付きませんが、辛抱してじっとしていると次第に肘が降りてきます。

これらのストレッチを起床・就寝時や仕事の合間の休憩時間等に毎日やるとかなり効果的です。

この時点で素引きの方も17キロの弓になんとか肩が入るようになってきていましたし、恐る恐る15キロの弓で巻藁を試してみたらなんとか引けました。まあ、引けたといっても矢を番えて離せたというだけで、弓に振り回されてるようなものです。

射形も左の肩が上がって、押手は弓を受け止めるのが精一杯という情けない姿です。このていたらくだと、二三本で離れが出なくなります。無理矢理勝手で離そうとしてもダメです。押手がグラグラし始めると、勝手は無意識に弦にしがみついて指が開かなくなります。改めて離れは押手が大切なんだと痛感しました。

ただ、学生時代に左手上腕骨を骨折したときには離れの瞬間無意識に押手が縮んで往生しましたが、今回は取り敢えず押し切れてはいるようです。

離れで押し切れずに弓力を受け止めてしまうとガツンと衝撃がきますが、これが骨折に相当堪えて痛いので余計に押手が逃げるようになります。悪循環ですね。もう、こうなると弦がバンバン切れます。新品のケプラーの太い弦が面白いように切れます。今回は弦が切れたりはしないので、学生時代の骨折よりは軽傷だということでしょう。

さて、その後も毎月1回レントゲンを撮って診察を受けました。素人目には骨に変化は見られませんが、医師からは順調に回復しているとの所見。そして、やっと9月末に最後の診察になりました。

いつものようにレントゲンを撮って、さらにもう一度MRIで腱まわりの炎症の退き具合を確認して完治と診断されました。ただ違和感は全くなくなったわけではなく、左肩も随分下がるようになりましたが巻藁で稽古しても今一つしっくりこない感じです。ゴリゴリポキポキ音がするのもそのままです。

それでも、10月に入ったら17キロと20キロの弓を交互に引くことができるまでになりました。20キロを引き続けてくたびれると17キロに換えて、またしばらく引いたら20キロに換えてという具合です。この調子で10月末には愛知県護国神社奉納大的式の射手も無事務めることができました。

これで一安心して、残った違和感はゆっくりとしか回復しないのだろうから気にせずにおこうという気分になれました。

と、そう思ったとたんにある時ポキリと音がして、肩の内部で何かが外れたような感触がありました。その時を境にゴリゴリポキポキしていた違和感が急に小さくなり、やがて殆ど気にならなくなりました。そういえばネットで読んだある闘病記に似たようなことが書いてありました。その人は肩内部の癒着が剥がれたのだろうと書いていましたが、まさに私の場合もそんな感じでした。

私を診てくれていた医師は、ゴリゴリポキポキは炎症が治まりきらずに癒着が残っているのかも知れないし、ずれて出っ張った骨のせいかもしれないと説明してくれていました。もし出っ張った骨のせいで今後ずっとゴリゴリポキポキが続いてひどく痛み出すようなら、当たっている側の骨を少し削る手術をする必要があるかもと言われていたので、ポキリと何かが外れて楽になったときにはホッとしました。

これでリハビリ記録はお終いです。本稿で紹介したストレッチは五十肩や弓道肩の予防・回復にも効くと思われます。お試し下さい。ただし、肩関節以外の病気で肩が痛くなっている可能性もあるので、まずは信頼できる整形外科医を探して受診することから始めて下さい。

コメント

pagi様

多少なりともお役に立てて何よりです。

私は今年の一月に背骨を骨折してようやく安静期間が終わったところです。最初の三ヶ月はコルセット固定でした。これからリハビリを頑張ります。

医師によれば、受傷後半年は安静にして、それから一年かけて鍛え直すというのが脊椎骨折治療の標準スケジュールだそうです。

安静にしている間に筋力も落ちて関節も固くなっていますのでリハビリに無理は禁物です。気長に頑張りましょう。

ちなみに昨年は踵を骨折したのですが、これもまだ痛みます。背骨と同時進行でリハビリ続行です。
峯 茂康 | 2013/07/14 21:13
こんにちわ。
私は、上腕骨大結節骨折をして、3ヶ月です。
峯さんのブログ、何回も読み、大変、為になりました。
上記のリハビリ、現在、全て実行中です。
日常生活には問題ないですが、やはり出来ない動きもあり、まだまだ
怠けられないなと痛感しています。現在は、整骨院に、週3通い
家でリハビリしています。
これからも、続けていきます。
骨折が、こんな、しつこいとは・・・(泣)と、嘆きながらも
ま、大丈夫だろ!と自分を励ましてます。
ヨガのポーズ、いまのとこ、70%は出来ると思うので、骨折前の
自分になるのを、楽しみながら、やっていくつもりです。
たぶん、まだまだです。
峯さん、
ブログ、ありがとう!
pagi | 2013/07/14 16:14

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

記事カテゴリ
最近のコメント
recommend
小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部