home >  弓道四方山話 > 巻の壱 「天の巻」

1-3 自分の力に合った弓を使うこと

弓道の修行において、自分の力に見合った強さの弓を使うことが極めて大切なことであり、竹林流の奥義書の冒頭の序文の後に、弓をこれから修行する人のためにやさしい激励の云葉があります。
「3体、父母より譲り受けたるもの、剛なりといえども我が力にあらず、弱なりといえども我が恥にあらず。」

注釈にいわく、3体というのは骨、肉、皮のことであり、骨格、筋肉、体の外形を云いいます。強い骨格の人でも、これは親からの遺伝によって自然に骨太く生まれ育ったもので、自分のせいではない、また逆に骨細く、力弱い人も自分のせいではないので少しも恥じる必要はありません。

ただ力の強い弱いを気にしないで、懸命に練習し、勉強すれば、水が岩石を平らに削るように、鉄が鋼を削るように、剛は剛、弱は弱とそれぞれの骨力に応じたように調和して稽古しなさい。

先生の云うことを信じて、「力の強きを妬まず、力弱きを謗らず正直を神として、法度に任せて(弓道の決まり、おきて、仕組み理論を良く勉強し、練習する)心底に治するものには、印可を相伝すべし」とあります。

これは、弓道では使う筋肉が一般の筋肉と異なるので、入門したての初心者では、力がなく苦労しますが、一生懸命に練習しますと、しだいに力がついてきますので、慌てないで力に見合った強さの弓で練習しなさいと云うことを優しく伝えたものです。また、無理に体に合わない強い弓を使いますと、正しい基本が出来なくなり、正直な(正しく真っ直ぐな)技術が習得できないので、行ってはならないと戒めたものであります。

丁度良い強さの弓と云うのは、同じ強さの弓を2本重ねて素引き(肩を入れる)ができるときの、1本の弓の強さが基準であると言われています。

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