home >  弓道四方山話 > 巻の拾弐 「文の巻」

12-13 「竹林射法七道」について

先日、小林冶道著「竹林射法七道」という古い弓道書を借用し読ませてもらいました。

この先生は明治から昭和の初期にかけて同志社大学弓道部の創世記の監督を努められた方です。どうして名古屋でなくて京都の人が尾州竹林なのと思いましたが、柴田勘十郎(弓師)とともに尾州竹林流星野派を関口源太先生に学んだということです。(私の恩師の魚住文衛十段範士は尾州竹林流星野勘左衛門派12代道統です。)

そういえば、友人からの便りで、ニューヨークの巻藁道場が弓師の柴田勘十郎の親戚の方が竹林流を指導していると云っていたのを思い出しました。回り回って繋がっているのですね。(註:12-18参照

この本は同志社大学弓道部の発行の非売品で、門外不出、複製不可となっていますが、昭和6年の古い出版であるので、もはや時効であろうと考え、感想を書きます。

この本は尾州竹林派の伝書(四巻の書)を基礎として、射法七道(弓道八節)の真髄を現代の弓道人に理解できるように、実際的で、合理的に、平易に解説したものです。

言葉使い、表現は一寸古い仮名使いであるので、読むのにはやや重いですが、格調高く素晴らしいものです。

射技、術理の説明は簡明で理路整然としており、秘本というよりも、弓道教本の射法八節の初版を20年さかのぼって著述されたような感じがします。

射法の基本は、骨相筋道にあり、体は真っ直ぐに、緩やかにして、力まず、大日の曲尺、押手手の内の剛弱、五箇の手の内、妻手の弦搦、弓手の肩口、妻手の肩肘、ただ伸びて少しも緩まざる、詰めと伸び、父母の納り、鸚鵡の離れ、離れの開き、残身の形など、最も単純で正直な(ただしくまっすぐな)射法を極めて詳細に述べておられます。

竹林流の伝書を基礎に解説したものと書かれており、「弓道四方山話」もまた同じですので、射法の基本的なスタンスは同じであり、同じ言葉が多数出ています。

また、注意深く読むと自分が陥っている悪癖(弓手の肩口が低く後にひかえて、妻手の肩口は高く受けて、妻手肘が落ち込む)については、しつっこいくらい詳細に述べています。これが、経験者の陥りやすい、誤解による癖として、お見通しであるのには驚かされます。

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