12-11 詳説「弓道」は凄い
この本は、小笠原宗家のじきじきの著作だから、礼法、体配を中心にしたものかなと思って手にしました。
執弓の姿勢から始まって、最後は基本体と基本動作、武道礼法までさすがに本物の芯が通っていますが、全編216頁のうちの170頁までが射技編であり、本物の骨法について詳細な分析を行っています。
驚くほど豊富な図解、科学的データ、解剖学的、骨格図、レントゲン写真などが212枚にも及び、弓道を科学的な目で徹底的に分析して追及し、弓道教本の裏側にあるバックボーンを証明しているものです。
内容は上級者向けで、相当に高度ですが、徹底的に詳しく、判り易く説明していますので、中級者、初心者でも興味深く読めば極めて面白いと思います。
写真では良い例、悪い例が対比され、わかりやすく説明されており、筋肉や関節、骨格を説明する解剖学の人体図、および、レントゲン写真は約60枚ほどにもおよびます。上腕3頭筋や肩甲骨だけでなく、骨法を医学的に説明しているところはなかなか覚えきれません。
また、この科学的なアプローチとは対称的に各流派の弓道教歌を多数引用しており、これが科学的説明とよく一致しているのに驚かされます。
小笠原流をはじめ、日置流、印西派、竹林派、大和流など、あらゆる流派の伝書、奥義書を引用している幅広さにも驚かされます。
この昔の弓道教歌が科学的な解釈と一致しているという点については、四方山話でもかいたことがあり、石岡先生の「弓道の新研究」、あるいは松枝先生の「弓道三昧」に通じるものが感じられます。
また、自分で云うのは少しおこがましいですが、私が四方山話で、やや独善的に言ってきたことの多くの事柄が、極めて精密かつ詳細に述べられているので、もっと早くこの本を読んでいたら、自分は何も書けなくなってしまったでしょう。
以下に共通点を列挙してみます。
・行射中の重心位置の前後をグラフで示している
・取り懸けの方法、懸けの親指と十文字、指使い
・左の手の内、天文筋、紅葉重ね、五箇の手の内
・弓構え、円相、三重十文字
・受け渡し、大三の位置
・弦道、詰め合い伸び合い
・頬付け、矢束、五胴
・力と仕事、作用と反作用、肘の絞り込み
・的付け、狙い、上下の狙い
・離れ、反射運動、離れの癖、三病、ビク
・伝書に示された離れ
・弦が矢筈を押す運動、矢の分離、矢の飛び方
・弓の強さは力のの半分
・射技中の呼吸
・六道の弓、弓道の心理
櫻井 孝 | 2003/08/13 水 00:00 | comments (0)
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