home >  弓道四方山話 > 巻の拾壱 「流水の巻」

11-6 萬法一に帰す

弓暦45年にもなって(途中20年のブランクがあります)、四方山話にいろいろ書いてきたのに、最近初めて弓道教本の第2、3巻を読んだのは、恥ずかしい限りです。

一昨年四段を受けるときに第1巻から第4巻までまとめて買おうとした時、2巻、3巻はあまり読まれないようですよと、弓具店の親父が云うもので、つい読むのを控えてしまいました。

一方、道場にかかっている額はなんだろうという話があり、私は「萬芸一に帰す」と書いてあるのだろうと思っていましたが、本村先生から「萬法一に帰す」であり、弓道教本の第2巻、3巻にあるよと、教えられましたので、先日買って読みました。

第2、3巻は射技編であり、射技の技術論に終始しているかなと思っていましたが、全篇の半分以上は射法における精神性との合一がいかに重要であるかを、各先生のお考えで展開されており、極めて格調高いものとなっています。

この中に「萬法一に帰す」があり、心意弓(心技体、真行想、あるいは審善美)の三位一体について格調高き精神論を展開されているが、私にはさっぱり判らないのが実情です。

この第2、3巻は百家争論というか、先生方のお考え、各流派の考えがあり過ぎて相当な反発も感じざるを得ません。これらの中には宗教的、観念的、唯心論的な考えの弓道論があり、反対に日置流や竹林のように、仏教的な面はあるものの具象的で、合理的な射法論を淡々と展開するものもあり、さらに最も極端にはI範士のように一切の射法原理を自分流の独断と偏見でばっさりと切り捨てて、独自の主張を展開しているのまであり、幅の広さには驚かされます。

しかし、A範士の観念論やI範士の我流理論が、この教本の評価を複雑にしたとは云いすぎでしょうか。

結局、自分が共感できるのは、さきに真理ありきのような観念論ではなく、弓道の真髄を具体的に合理的に淡々と教えてくれる先生が好きです。その点では浦上先生、富田先生の射技理論は凄いと思います。

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